刀装シリーズ | ナノ






代わる審神者と四番目の審神者3



後日、薬研と歌仙さんが絡繰りを使ってあちらとなんらかの接触をとった。
少しの間だけ、政府とやらの使いが来るまで平穏な日々を過ごした。

今後は全員で話あって刀解を望むという結論をだした。

それまでに様々な意見がでた、
この本丸をどうするか、放置はないよな
このまま自分達だけで神隠しして神域に籠る、とかは
傷が癒えないのなら、籠っても仕方ない。重傷者が辛いだろう
人間を信じられるのか?また、別の審神者を当てがわれるのではないか
でも、元凶の人間はいなくなりました。あちらがこの様な事態を起こした刀剣を残すのでしょうか
・・・人間の考えることはわからない。あちらが、俺達の考えることがわからないように


なら、刀解を望もう

一言も喋らなかった、鶴丸さんが提案した。

鶴丸さんは話合いの参加はしていたけれど、大倶利伽羅さんのように輪の中には入らず一線身を引いていた。その姿は、完璧に正気を失っていないものの黒い靄を纏い荒御魂に堕ちかけている。鶴丸さんに他の者まで自身のように引っ張られないように距離を置く≠ニ告げられて、今の状態になっている。

別にそんなこと、この本丸の刀剣は気にしないのに。
貴方・・・一人、審神者殺しの業を背負わせしまったことを全員、安心はしてるけど同時に後悔を抱いていることに。

正直な。俺は還れるかわからないが、君達は違う。これ以上、人を傷つけるのも殺すのも、人に傷つられるのもーーー出来ればそうなりたくない。もう、俺は君らが壊れていくのは見たくない

鶴丸殿・・・

結局、無理矢理ではなく御魂を本霊に還してもらえるならそれがいいということになった。どの刀剣の表情も、その結論に大なり小なりほっとしていたのだ。



ーーー政府の式神こんのすけが、この本丸を存続すると告げるまでは。

地獄はまだ終わらない。いろんなものを僕等から根こそぎ奪って消えていなくなるまでーー続く。




この辺りの記憶は様々な出来事と審神者の入れ乱れで、混同しているかもしれない。こんのすけにその決定を聞いてから、僕等は政府の判断に唖然とした。

普通はありえないだろ。人を殺した神がいるのに、そこに人を送りこむのは。何より僕等は、もう人に従う意思など持っていない。その事を、こんのすけに言うが申し訳なさそうに頭を垂れる。

『皆様の境遇も、把握しております。その事を政府の方に伝えたのですが、頑として決定を覆さずどうすることもできないのです。ただ、どうかーーーどのような審神者が来ることはわからないのですが、最初から斬りかかることだけはせず、せめて話しあいの場だけでもーーー設けることはできないでしょうか』

『・・・それは、政府がどうするかわからないが、ここに来る審神者との話し合い次第で、刀解もあり得るということですか?』

代表として江雪兄様が、こんのすけと話し合う。



『はい・・・それは、難しいところなのですか・・・こんのすけも引き続き政府に申し立てます。
此度は、審神者の暴挙を長らく放置していた政府の対応・・・申し訳ありませんでした。
謝って済むことではありません、この決定も可笑しいと思いでしょう。
ここへ来て想像していたのとは違い、穏やかに刀解を望まれる刀剣男士様達に何も出来ずこんのすけは悔しです。気に入らないというのなら、こんのすけを破壊しても構いません』



そういったのは本当のことなのだろう。声音や真摯な態度に心からの覚悟だと感じとれた。

此処へと遣わされた傀儡・・・このこんのすけはとても誠実な式神だった。
僕等と同じ個体差があるのかもしれない。僕等の事情を知ってからは、僕等を優先してくれる上で政府や審神者に挟まれながら奔走している姿に、好ましさを感じ気にかけていた。

この本丸にこんのすけはいなかった。詳しくいうと僕が来るまでにあの男が必要ないと返したらしい。

だけど歌仙さんが返された後、あの男が再びこんのすけを置くことはないので僕等にそのことを言わなかったけれど、そのこんのすけも審神者をなんとかしようと頑張ってくれていたらしい。返されることになって、最後までお側に居れず申しわけないと悲しそうな姿が忘れらないことを、心に留めていた。破壊されなかったことだけが幸いだよと、懐かしそうに言っていた。そして、二番目に来たこんのすけもそんな姿に重なったみたいだ。

とりあえず、話し合いの場は設けることにはしたと江雪兄様がいう。他の皆も、こんのすけの言葉に少々気を許したらしい。





最初の一人目は数日、話し合ったものの無駄に終わり殺しはしなかったものの逃げ出した。初め手入をしてくれ丁寧な物言いだったが、僕等の望みがあっさり却下され共に戦って下さいとしか言わなかった。そこまでならまだ我慢も出来たけどこちらが大人しいのいいことに、本性を現したのだ。

比較的に早くに受け入れていた、加州さんや長谷部さんに鎌倉以上の所へ出陣させ破壊された。大和守さんは、なんでだ馬鹿野郎!≠ニ悔しそうに吐き捨てていたけど・・・泣いていた。
後から同じ部隊にいた燭台切さん、陸奥守さんが僕等に、一人目の審神者に加州さんより練度の低い者を出陣させるというの聞いた加州さんが自分が出陣すると申し立てていたことを伝えられる。

その中に、大和守さんの名前があったからもしかしたらというのを大和守さんが偶然聞いてしまい、感情が爆発して審神者に斬りかかったが刀解される。そんな形で叶えられた刀解だがそんな結末を望んでいなかった。逆鱗に触れた太刀の刀剣達が、抜刀して刀をちらつかせたら一人目の審神者は慌てて現世と逃げていった。

それを眺めていた薬研がぽつりと呟く。

『長谷部の旦那も・・・加州と似た理由だろうな』

『そうだね・・・長谷部くん優しいんだ・・・本当に、もう』

『・・・そうなの?』

『主命厨で生真面目な人だったけどなー・・・人一倍、責任感強い・・・あの審神者があんな早い行動に出たのも自分せいだと思ったのかもな・・・本当にどいつもこいつも・・・はは』

『薬研・・・』


それは、一期さんのことも含んでいたのだろう。乾いた笑い声の中に、遣る瀬無さが滲んでいた。燭台切さんが次があったら僕かな、と呟くので思わず手を握ってしまった。その手を握り返してくれたけれど、その後何も言わなかった。僕らは、審神者のことで意見を交わし合う太刀達を眺めていることしか出来なかった。





『こんのすけよ・・・審神者という人間はあんなのしかいないのか?』

二人目の審神者に、今剣が夜伽として手を出されかけ黒い靄を更ににどす黒く変化させた鶴丸さんが、地を這うような声でこんのすけに問いかける。近くに全裸で泡を吹いた二人目の審神者が転がっている。鶴丸さんは、なんとか殺すのを留めたのかそれだけは安心した。

『そんなことはないです!しかし、ここに来る審神者の酷さといったら・・・なぜ政府がこのような者を寄越してくるのか・・・私にもわからないないのです』

『人間の御上は、何を考えているんだ』

『こんな奴に、同田貫や燭台切は・・・!』

こんのすけの痛切な返答に駆けつけてきた他の刀剣や御手杵さんが、忌々しいというように声を絞り出していた。

『最初から一人目と違い強引だったけれど、こんな下郎だったとは・・・もう、政府と接触を図らずここを閉じた方がいいんじゃないか』

歌仙さんが、力無く呟いた。

今剣は殴られ気を失っていたものの薬研が早くに姿を見えないことに気付き、僕に伝えて心当たりの場所を探していた。僕が太刀か打刀を探していたら鶴丸さんと大倶利伽羅さんを見つけてそのことをを伝えて、この件はなんとか最悪なことにならず未遂に終わる。気を失ったままの今剣を手入部屋に運び、手入の妖精と粟田口達が看ているのでそちらは大丈夫だろう。
心に深いを傷を負ってないか心配だ・・・乱の件もあるから。


二人目の審神者は、そこそこ力が強いのか強引に僕等を何らかの術式で縛り居座っていた。刀剣では神格の強い(片方は荒御魂になりかけ)鶴丸さんや江雪兄様をも抑えつけるので、僕等は抵抗することも出来ずに、されるがままに命令されていた。

御手杵さんと出陣した・・・蜻蛉切さん・燭台切さん・同田貫さんは中傷のまま行かされ、破壊された。中傷ではあったけど帰ってこれた御手杵さんが守られて残されるのは、こんなにも心に堪えるんだな≠ニ顔を伏せて洩らしたので、僕は宗三兄様のことを思い返された。視界が滲むの裾で拭いて誤魔化した。

燭台切さんはなんとなくわかっていたのかな。
(大倶利伽羅さんは本丸に残されていたので、それを聞いてなんの反応もせず立ち去ったけれど、拳を強く握り締めるを見てしまった)


そして、二人目の審神者は夜伽だけ今まで命令していなかったが、この様である。鶴丸さんが、あの男に使った同様の手段で防げたらしいが、荒御魂の侵食が進む。

『・・・っ』

『鶴丸殿!あまり無理をなさらないで下さい・・・このままでは!』

『・・・江雪、あまり触らない方がいい。抑えるのが、精一杯なんでな・・・こんのすけ、次の審神者が来たらもう抑える自信はない。そのことを政府に伝えろ。これは俺からの最後の忠告だ』

『鶴丸様・・・はい』

その会話と共に、二人目の審神者は現世に繋がる門の外へ放り出した。

残った刀剣は一部の短刀以外、残るだけに練度が上がり高かった。政府はそれを手放すのが惜しいのか、レア太刀二振があるからなのか本丸は解体されずに存在していた。

『それだけが理由なのか?何か別の思惑がありそうだな』

『え?』

『いや、なんでもないさ』

『さよーー!うまとうばんいきますよー!』

『あ、はーい。・・・鶴丸さん、またね』

『ああ』

ある日、鶴丸さんが呟いた言葉が気にかかった。あの事件のあと、今剣は岩融さんの時ほどじゃないけど回復したにはした・・・若干、毒を吐くようなった気がするけど。




三人目の審神者は妙齢の女性だった。最初に斬りかかり怯えたように必死で頭を擦りつけ土下座するさまに僕等は困惑した。これまで男ばかり来たので女の審神者には初めてなので、僕等は女性をどうするか困り、殺しはしないから追い返そうとしたのだけど一ヶ月だけでも時間を下さいと言われて悩んだ。女性の事情は知ったことではないが、すぐには帰れないらしい。

『こりずにまた送り込んできたのか』

『しかし、反応を見て害意がなさそうですね』

『御霊を戻してくれそうか?』

『審神者は殺せばいいだろう』

『これ以上、人間に付き合う必要が無い』

『でも・・・あの人、怯えていたよ。これまでの審神者とは違うじゃないかな』

『一月様子見るか?刀解はいったん置いておこう』

『・・・使っていない離れがあったはず、そこで生活してもらいながら最終的な判断を下そう』

離れに住んでもらい、手入や一緒に刀装など作り少しづつ関わりながら女性の人となりを知っていく。

今までろくでもない審神者しか関わらなかったせいかもしれない・・・女性の誠実さと暖かさに少しづつ絆されていった。一月立つ頃には、この女性と主従を築いていくのもいいかもしれないという判断になる。

頑なに鶴丸さんは女性と必要以上に関わらず避けていた。それから、御手杵さんと鯰尾さんと大倶利伽羅さん。鶴丸さんは荒御魂の件がある・・・大倶利伽羅さんは元々そういう気質だけど。

それを女性は懸命に諦めず関わろうとしていた。僕等は短刀は不思議に思いそのことについて、聞いてみた。

『そうか・・・あの審神者の俺たちに対する個々の態度や刀剣以外に対する態度を注意深く見てみろ。俺は、驚かせてみようと観察していたんだが・・・このままでいてくれれば、まだいいんだがな』

『ほら、俺てこの中じゃ目立たない方だろ?物語でいう群衆の一人だな。だから、ぼろがでやすいんだろうなーちょっと悲しいが・・・。お前達は群衆を気にするか?』

『あのアマ・・・おっと、女の人な。短刀≠ノは本性を見せないからね?仕方ないか。俺も馬当番してた時に気づいただけ・・・ど、骨喰がな・・・』

『・・・・・・・・・・・あれは、綺麗≠ネ者が好きだ。鍛刀し始めたら、時期に現す』

それぞれ濁したような言い方に僕と今剣は更に疑問に思う。
薬研だけが、何かわかったようで、神妙な顔していた。



そんな会話してから二月立つ頃だ。

彼ら言っていた言葉がなんとなくわかった。巧妙に優しい顔の下で、あの審神者は醜悪な本性を隠していた。だけど、その本性を気付くのに遅すぎた。

こんのすけも、歌仙さんも、大倶利伽羅さんも・・・江雪兄様もいない。



心の何処かで、信じたかったんだ。人間を。

それでも、きっと信じたかったのだ。



15/6/28

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