刀装シリーズ | ナノ






番外 時の政府の内部事情



西暦は遥か未来。

歴史修正主義者、奴らに対抗できるもの刀剣男士≠サして、それを呼び起こす審神者≠統括する時の政府。
組織の部署の一角にて、壮年の政府職員は沈痛な面持ちで頭を抱えていた。



歴史修正主義者が現れ始めた頃、 時の政府は迅速に対策し応戦できる状態ではなかった。

事がことにこの異例の事態ゆえに、初期の頃の政府の対応は今でも非難されることの多い所業の数々。過去や未来あらゆる時代から審神者の素質を持った者を、一方的に集め就労させるなどや、時には拉致し最悪死亡させるなど、本当に当時の政府は真っ当ではない。だが一方で、これ以上何のために自分たちは戦っているのだと声をあげる政府内関係者が集い、適切でないやり方を変えっていき法を整備していく。違法なやり方をしている上層下層関係なく役人を処罰し、時の政府内部清浄という名の改革がなされた。

その問題となった強制招集のやり方も法で定め禁止されたが、それもほんの数年前。その被害にあった審神者は記憶消去を選択し辞めていく者もいれば、後遺症を患いながらも業務をまっとうしてくれる者もいる。容易に解決できる問題ではない、これからも我々が戒めて取り組んでいく問題だった。



審神者達からブラック政府ホワイト政府と揶揄されているが、それでも今ではすっかり落ち着きつつあると思っていた。

それも、一時過激だった価値のある刀剣男士(レア刀剣と称される)狂い問題に終始を打つべく、前代未聞の全審神者に二振り献上騒動を敢行し、それはもう空前絶後の賛否両論の大騒動となった。政府の元にある本体となる刀剣の本霊から、分霊にあたる刀剣男士たちに問題への思いが伝えられるまで、騒動は続いた。今では、新たな刀剣男士たちの数も増えに増え、多少の問題はあるものの穏やかに業務改善していく日々。

その最中、とんでもない大事件が起こってしまった。

数日前、政府の歴史修正主義者対策本部に一組の老夫婦が襲撃じみた来訪した。




遅れて慌てて止めに入る姿で、ここへと彼らを連れてきたらしい調査員に事情を聞いた。彼は長期出張の業務中である。各年代におかしな時間干渉がないか調査していた。通常ならむやみに、過去の人間を連れてきてはならないことは知っている者だ。

彼は疲れた表情で、手短かにことのあらましを話しだした。
その老夫婦の来訪理由曰く『孫娘が、ある日学校の帰宅中に姿を消していなくなってしまった』ということだった。もちろん一通り警察にも通報したそうだが、老夫婦のいる時代で孫娘の居場所を見つけだすのは不可能のはず。一年以上経っても諦めず、独自で探していたらしい。

そこで、異質な老夫婦の存在に気づいた彼は、疑問に思いつつ神妙に接触するやいなや捕まってしまい。強烈な尋問される手前、このままでは命の危険を感じ手取り早く、ここに連れてきたそうだ。

『…ここへと辿り着く過程は是非聞かないと』
『それよりも、彼らが起こした騒動を先に片付けるのが先だ』

なんせこの来訪に、突然怒鳴り声が聞こえ、自分を含めて周りが止める隙もなく。
審神者の初期刀選びに納められていたケースから、一振りを掴み鮮やかな手並みで鞘から引き抜き。孫娘を誘拐したという主犯の男に剣先突きつけたのだ。
真っ青になるその男の顔見れば、黒い噂が常にあり、もはやろくな噂を聞かない人物だった。審神者を選考ーーースカウトする政府の一人だが酷く怯えていた。手引きしたのは、その反応から間違いないだろう。

もちろんその場に政府の刀剣男士達もいたが、一連の流れ見て感嘆していた。止めて欲しいと思った。ご夫婦に対する疑問は山ほどあり、その行動をとることになったなりゆきも聞かねば。



時を超えてやってきたとんでもない御老人。執念でつきとめた。
人も殺しそうなあの鋭い眼光。時代的に約三百年前なら大きな大戦経験しているはずだ。言葉濁すがあの老人に詰め寄られるなんて恐ろしい。しかし、事態はそこで終わらない。

それよりも更に恐ろしい事実が発覚した。
政府職員が、悩ませているのは手元にある報告書の束だった。





審神者No.×××06

2×××年から2225年ーー現在に続く由緒ある審神者の一族
一族を築きあげた初代の審神者は大層優秀な才能のある人格者で、数々の偉業を成し遂げた存在。それに続く一族の人間もまた優秀な審神者。

(略)

おそらく×年×月死亡



すべての一族の人間みんながそうではなく、やはり代を重ねていけば権力に傘を着て好き勝手にする者も現れるのだ。それが、この審神者の両親であった。
一族と繋がりを持とうと政府側の人間の一人が自分の娘を嫁に出し、一族の一人であった男と結婚をし、生まれたのが男だった。しかし、父親となる男は一族でも能力的に劣る方で性格も他の者にコンプレックスを抱きたびたび問題を起こす厄介者。でも、一族の人間であること霊力もあるにはあるという判断で審神者をやらされたていた。
由緒ある審神者の一族≠ニいう名義を失いたくない一族たちは、この父親の愚行を身内の恥だと、名義に傷がつくとその父親の存在を放置し隠し続けたのだ。誰も、父親のことを更生も注意など心を砕かれることはなかった。父親は、それを良い方に受け取りそのまま審神者を続けた。そして、その息子は自己中心的に間違ったまま成長していき。

「その果ての刀剣男士からの謀反により死亡、か」

審神者死亡
廃棄本丸及び永久凍結管理
業務報告書

どれもこれも、穏やかではない物騒な文字が並んでいる。その一つに、違法とされている業務を行なっていた男性審神者の末路に、頭を抱える状態になっている。その本丸についての詳細と、後任の審神者が書いたと思われる途切れた報告書。

「まさか、まだこんな被害者がいたのか…」

そう、ブラック本丸運営していた審神者の死亡及び、降任の審神者の連続交代、被害にあった孫娘、少女とのやりとりからの通信障害のち手を出せない類の放置本丸化と見事に、現在も後処理に追われて案件の数々に類似していた。そもそもこの書類も、あの男から押収したものである。本人から事情聴取して、連絡が途絶えて放置していたと聞いて呆れかえった。あの御老人が孫娘のことを諦めていなければ、発覚しなかった事実に今の政府の現状への課題も増えた。まだまだ、内部の膿は酷い。



その本丸の最初の審神者の情報は、刀剣男士による謀反だと資料に書かれていた。後の審神者も交代と死亡なのだが、この少女の報告書は異質さが際立っていた。報告書というより日記と捉えられるような内容に、どうせあの男はろくに目を通していなかったのだ。

おかしなこの報告書は定期的に律儀に綴られている、政府の役人も最初の審神者も含めた他の審神者たちもしてやれなかった日々≠ヘ、あの本丸の刀剣男士たちには響いていたのだとうかがわせた。詳細がわからないが、刀剣男士たちとは交流ができていたことと、刀解を望んでいるようなことが記されていた。

しかし、それもある日付で途切れている。その理由をあの男に尋ねると。

『あの馬鹿娘は、刀剣たちとともに糞を投げてきたんだぞ!?』

どうやら、この少女は死亡はしてはなさそうだが、その突拍子もない行動を気にいられ本丸事隠されてしまっている事案が浮上。またも、問題になっている別の案件が絡んでしまっていた。




「ああ…あの御夫婦にどう説明すべきか」

厄介事を押しつけられがちな政府職員は、胃を抑えるのだった。


18/4/2

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