刀装シリーズ | ナノ






刀装兵が愛おしい(2)


【てきがやってきたよ!】



ぴっーぴっー喚くではない、こちらの動きがばれる。静かに。

外が騒がしい・・・物騒だのう。やれやれ、彼奴等もいい加減諦めてくれんか・・・な。

お主らは、其処に隠れて居れ。ん?加勢致す?・・・でもな。

・・・よかろう、降参だ。



ただし、無茶をしてくれるな。




夜中に俺の睡眠を邪魔するとは、いい度胸だ。最近、少々暴れたりなかったのでこれに憂さ晴らしするか。

やる気満々で登場してみたら、げっという雰囲気をされる。はて、どういうことだろうか?
まあ、よい。相手は検非違使だ、相手において不足はなし。運が良ければ、資材が手に入るか?

「さて、狩るか・・・と、何故に退却する」

全力で退避する検非違使達。しかし、断末魔の叫び。

もしや・・・と思って月の明かりを頼りに目をこらせば、目潰しして足止めする二つの刀装兵達。俊敏に動きながら、デカブツ達の攻撃を交わす様は圧巻。

「攻撃は微々たるものだが、やはりなかなかのいい動き。・・・ん?」

さあ、やちゃってくださいというような、俺の目の前にいるもう一つの刀装兵。
小さいのに頼もしい、無茶はしてないようだが。

「とにかく、やるか」



その晩、資材を巻き上げた。
襲撃する場所を間違えたらしい、やらやれうっかりな検非違使だ。





【あそんでー!】




はっはっはっ、いいぞいいぞ遊んでやろう。

何をしようか・・・お手玉?酔わないか?


ん?どうした?戸を叩く音がする?
気のせいだ気にするな。

みしみし、音が鳴っている、か。喧しいのう。
戸が壊れそうだ、少し黙らせてくる。





「久方ぶりに会ったといいますのに、何をなさる!」
「ここはぼろいん・・・でな、でかい狐の馬鹿力のせいで崩壊する」

戸を開け、その正面にいた者に平手打ちを喰らわす。手加減したからか、まだ喧しい。

「手加減したと仰るが、後方へぶっ飛んだのですが・・・」
「鍛えが足りないな」
「三日月殿の方が馬鹿力・・・いいえ、なんでも」

第二波をお見舞いしようかと、思案しはじめたら野生(仮)ゆえに察知された様だ、口を謹んでも伝わっておるぞ?

「今日は何の用だ?また勧誘か、しつこいのう・・・」
「たびたび差し入れに来ますのに、なんという言われよう・・・小狐は悲しいです」
「おお、何時もすまんな。押しつけ・・・貰ってばかりだったからな。最近、ぶちのめ・・・手に入れた資材がある。溜まりまくっているから、持っていくといい」
「悲しんでも無視・・・聞き捨てならないことが幾つかありありますが、聞かなかったことにしましょう」

中に居た刀装兵達が、外の騒ぎを聞きつけてかなんだなんだ、と出てくる。
俺の衣によじ登り、肩や頭に乗る。ふーどっこいしょと、いったように汗を拭う姿はもう見慣れたものだ。

一つは奴に近付き髪を掴み潜りこんだ。困惑したような相手の刀装兵達を気にしていない。自由だのう。


この人の誰?というように見つめてくるので、少しばかり説明する。

「成り行きでな、此奴の率いる部隊が壊滅しそうだったのを見かけてのう、其処に居た短刀に助けてと懇願され見て見ぬ振りできんかったから助けたんだ。相手の検非違使もだいぶ弱っておったし、撃退できたからな、あの時はよかった。取り敢えず、門の近くまで、付き添ってやって帰ってもらったのだが・・・結果、これが何処からか居場所をつきとめたのか献上物のような物を持参して、たびたびうちに来てくれと煩いのだ・・・。まあ、お主らと似たような感じか?・・・ああ、お主らは迷惑じゃないぞ?」

やっぱり迷惑だったかなと、しょぼくれる刀装兵を撫でてやる。
嬉しそうに手に擦り寄ってくる姿にほっこりした。

その件があった最初の頃、余りにも鬱陶しくなった俺は他の三日月にしろというが、貴方がいいんですと熱烈な反応で部隊全員が俺を連れてこうとするので、少しばかり(荒御魂使用)真剣必殺を太刀と大太刀に喰らわせてやれば大人しくなった。
短刀には手をださない。じじいはもてもて過ぎて困る。


冷静に見えるが荒御魂。連れていけば、お前の所の審神者がどうなるかはわからんぞ?と脅・・・諭せば渋々諦めたはずだが、未だにこの狐の訪問は続いている。

・・・訪ねて話をするぐらいなら嫌ではないが。そう思った後に、例の話が出るので奴の扱いが雑になっている。
部隊で来るみたいだからな、他の者は別の場所で休憩中かの?石切丸あたりなら、普通なんだが・・・。

「何か失礼なことを思考されている気がする。それにしても、この面妖な刀装兵は何ですか?人の髪を好き勝手に弄くり回すとは・・・これ!三つ編みにするな!」

狐もとい小狐丸は、そう呟きながら刀装兵を引っ掴む。大人しくぷらぷらされている。

「先日、助けた審神者の娘に貰った?刀装だ。手荒な真似はしてくれるな」
「扱いの差に・・・いえ、もう何も言うまい。・・・この刀装、私のと違いますね?ここまで個性があるのは不思議です」
「細かいことを気にするな」
「そうですね、細かいことを気にしていたら悩み続けます」

刀装兵達のことを言っていたはずが、何故こちらを見るのか。
狐汁にしてやろうかと思ったが、刀装兵がまずそうなのでやめて、と悲愴を含んだ様子で訴えてくる。うむ、やめよう。

まあ、よい。こうなったら休憩が終わるまでなかなか帰らないからな。
立ち話もなんだ、部屋に招くか。



刀装兵達が小狐丸の髪で遊んでいた。
相手の刀装兵もなにかの影響を受けたのか仲良く遊んでいる。弄られている奴は諦めた様な遠い目をしていた。



いつも俺は聞き役に徹するので、小狐丸が近況を話すという関係が出来上がっていた。
雑には扱うが、同じ三条派。気安さはあるのだ。

「そう言えば、刀剣の風の噂で熊を配下した三日月宗近を見かけたと聞いたのですが・・・まさか貴方ではありますまい?・・・真相は?」
「配下とな?そんなことしてないぞ」
「・・・噂ですか」
「ああ、でも刀装兵と一緒に食糧に出来ないかと追いかけまわしていたな。最後、降参した様な姿をしていた」
「それが原因でございまする!」


その話を聞き、今後は行動に気をつけようと思う。


「最近、ぬし様は一期一振殿ばかり近侍になさる!其れまではこの小狐が仰せ使っていたというのに!」
「難儀よなぁ、鬱陶しかったんではないか?」
「どうでもよさそうに・・・」

一度拝見したことあるが、なんともきつそうな女だった。中身はそうでもないかもしれんが、今は人に歩み寄るつもりはない。知ったことではない。
本丸はちゃんと運営しておるようだしな、たまに行軍を無理するぐらいか。

以前そういうと、此奴が怒ったので煽る様な発言は控えている。
健気に慕っているのは見てとれるので、此奴の想いが報われるのは祈っているぞ。



話し終えたのか、部隊に戻る準備をする小狐丸。
何時もの如く、献上物の扱い方を説明している。俺の生活に思う所があったのか、世話焼きになりつつある、奴の気遣いはやはり嬉しい。まあ、それも持て余していたんだが。



これを扱えるか?と刀装兵に問うと、了解といったような仕草をする。今日はこれを使っての夕餉になるか。
楽しみだ。



しかし、去り際。


「で、そろそろ我が本丸へいらっしゃいませぬか?」


定番の台詞吐いたので、資材とともに投げ飛ばす。

しつこい男は嫌われるぞ?これさえ、なければな。


否、刀装兵達は避難させてある。



その日の夕餉は鍋にした。









賑やかになった、毎日を過ごす。


今日は、室内を少し掃除した。

刀装兵が来てから、このようなことを口煩くいうが少しずつ周りの環境が良くなっている気がする。

近くの川で水浴びをし汚れを落とし、小屋へ帰宅。
三日月は敷いていた布団に潜り込む。枕元の近くに三つの刀装兵が身を寄せ合って、既に寝ていた。
すーすーと寝息を立てる刀装の頬を人差し指でつんつんとつつく。
くすぐったそうに身をよじるが、寝たままだ。

それを見て、今日も一日楽しかった。と三日月宗近は思いながら、目を閉じた。




記憶の中にある、一番幸せだったあの頃。

いつかの記憶には届かないかもしれないが、あの頃の様な日々を望んでいた。

ーーーーー今、満たされている



15/5/30

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