逃げ水(裏窓)

絡まる電線
複雑な回路
帰路のアパートから覗く上着は確かに誰かが生活している雰囲気を醸し出していた
陸橋には速度オーバー
滑らしたライターの火花が眩しく痛い
揺れる事のない光りの残像の帯は痛切に何かを語ろうとしては瞬きに均されていく
熱の籠もる化粧室を出たのは竦みによる恐怖或いは脱兎若しくは癇癪
関係のない無意味な事だけれど確かに見知らぬ誰かが入れ替わったのだろう
二度と上着を見る事はなかった
此の街を去るのは何時になるのだろうか
早ければ刹那の安息を得
遅くとも一縷の望みを得るかも知れない
所詮は妄想であり推察は推察でしかなかった
如何にも作り上げた愚鈍なる狡猾そして寧悪の白々しい低い声が聴こえる

[velvetnight?]

暖かさ等思考回路を鈍らせる果実に沈める狂気若しくは凶器宜しく悦ばしくはない
火照った頬には現実を
気休め明滅
切れた声










おやすみなさい。名も知らぬ夜よ。


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