義経の旧友と武将の話 | ナノ

めんどくせ

「あ、鬼」


空都は酒呑童子がふらふら歩いている後ろ姿を見付ける。
特に用事はないが、何となく声をかけた。何時ものように鬼、と呼んで。

…が、返ってきた返事に空都は一瞬固まる。


「…めんどくせ」


酒呑童子は、確かにそう言った。
足を止めて後ろを振り返るなり空都に言ったのだ。


「い、いや俺…まだ声をかけただけ……」

「めんどくせ」

「……」


いや待て、こういうことを言うような奴だったか?
何か変なものでも食べたんじゃ…?

そう思った空都は試しに天気について言ってみる事にした。
普通の会話なら、普通に返事を返す筈だ。


「えっと……今日は良い天気だよな?」

「……、……めんどくせ」


…何なんだこの返しは。
一瞬間があったのは何故だろうか。
喋るのを止めようとしていた様にも見えたけども。


「…ぶん殴るぞ、鬼」

「めんどくせ」

「おいっ!」


酒呑童子は何がなんでも「めんどくさい」で通す気みたいだ。
何だこれは。


「…鬼、変な物でも食ったか?」


空都が尋ねてみるが酒呑童子はやはりめんどくせ、としか言わない。
一体どうしたというんだ。


「お前本当にどうしたんだよ」

「…めんどくせ」

「さっきからそればっかだ!……お前っ」


少し感情的になりかけていた空都は、そこまで言って言葉を止める。


「いや……やっぱ、何でもない。…悪かったな呼び止めて」


取りあえず今酒呑童子に聞いても意味はないと思い、空都は引き下がる事にした。



それから数日後、酒呑童子と一緒にいた司馬昭を目撃した空都。
話を盗み聞きしていた空都は、数日前に起きた酒呑童子の「めんどくさい」はどうやら司馬昭の影響だと分かった。


「おーまーえー……!」


それが分かるなり空都は酒呑童子と司馬昭の間に割り込み、司馬昭の胸ぐらを掴む。


「げっ、アンタ確か……!」

「お前!鬼にややこしい事を教えるんじゃねぇ!」

「わ、悪かったって!だからそんなに怒るなよ……」


司馬昭は慌てながら両手を上げて、空都を落ち着かせようとまあまあと宥める。
司馬昭の態度を見て空都は少しばかり睨んでから、胸ぐらを掴んでいた手を放す。それから後ろを振り向き、今度は酒呑童子に向かって言った。


「鬼も鬼でだな、簡単に聞いたら駄目だ!子供じゃないんだからな!全く…、会話がまともに成立しなかったのには驚いたぞ」

「すまなかった……」


酒呑童子からの謝罪を聞いた空都は再び司馬昭に向き直る。


「お前、鬼にもうややこしい事を言うなよな。今度言ったら……」

「わ、分かってるって!俺はもうしないから!な?」


へらへらした司馬昭を見て空都はまたやらかすなこれは、と頭を痛めたのだった。

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