雨
ざあざあざあ。
しとしとしと。
ぴちゃぴちゃぴちゃ。
ぽたりぽたりぽたり。
雨は色んな音を出す。
色のない世界にも、音楽を奏でる雨。
時に嵐になり雷を出しては人を惑わすものの、長くは続かない。
まるで俺の精神みたいだと思う。
だから雨が好きだ。
ざあざあと降る雨の中、俺の体は雨に当たりびしょぬれになっている。
それでも構うものか。
雨は全てを洗い流してくれる。
「空都」
雨の音と混ざって、俺を呼ぶ幻聴が聞こえた。気がした。
「空都」
今度は耳の近く。
…ああ、幻聴じゃないのか。
「よし、つ…ね……?」
視線は空へ向けたまま俺は声の主を呼ぶ。
すると、後ろからそっと包むように優しく抱き締められた。
…あれ、何も差してないのか?
濡れるぞ、お前。
そんな事を言えば、後ろから言われた言葉に俺の荒れていた精神が和らいだ。
「……空都、俺がいる」
「うん」
「何も心配するな」
「……う、ん」
「だから、そんな風に泣くな」
「……、…………っ」
ザアザアザア。
ざあざあざあ。
その優しさに何度救われただろう。
雨が全てを洗い流してくれる。
それは涙も同じだった。