義経の旧友と武将の話 | ナノ

大剣の持ち主

「あれ、何だこの刀…」



空都は鍛練場にふらりと立ち寄ってみると、壁に寄り掛けられた一際大きな刀が目に入る。
大きい刀を見たことがなかった空都は好奇心に負け、近付いて見ていた。



「はー…!こんな大きな刀なんかあるんだな…」



あまりの大きさに感心してしまう。
こんな大きな刀、誰が扱っているのだろうか。

空都はこの大きな刀の持ち主に興味がわいた。



「こんな大きな刀を使う奴はきっと大男に違いないな…!」



暫く大きな刀を間近で見ていた空都だったが、背後に気配を感じて後ろを振り返る。



「…ん?」

「あ…」



後ろにいたのは空都と身長が変わらない青年が立っていた。

まず目に入ってきたのは全体的に緑色が印象的である服。
頭に鉢巻をしているが、色といい少し幸村とは違う印象の好青年といった感じだろうか。



「拙者に…何か?」



少しばかり見ていたせいか、気まずそうに言い出した青年。
それに気付いた空都は少し笑って謝る。



「あはは、ジロジロ見てごめんな。鉢巻してるから幸村の兄弟かと…」



空都が冗談混じりに返せば青年に違うと言われてしまった。



「何を言うんだ!拙者と幸村は仲間であって兄弟じゃない。お前は随分と失礼なんだな…」

「うぐ…」



失礼と言われては返す言葉がない。
空都は青年に対し素直に謝っておく事にした。
そのついでに、この壁に寄り掛けられた刀の持ち主を青年に聞いてみる。



「ああ、それは拙者の大剣だ」



だが返ってきた言葉に空都の思考は一瞬停止してしまう。

今、目の前の青年は何と言った?



「…え…ええと、この刀は…」

「だから、刀ではなく拙者の大剣だぞ?」



「…はあ?!」



そう言われた言葉に信じられなくて空都は青年を見るが、嘘をついている様な感じではない。
寧ろ青年としては普通に答えたのだろう。

空都の言っている事が分からず、顔を傾げている。



「…拙者の大剣がそんなにおかしいのか?」

「あ、いや…」



おかしいと言うよりも、空都が想像していた持ち主と全く違っていたのだ。
大男ではなく、空都と同じような体格の青年がこの刀…いや、大剣の持ち主だったとは思わなかった。

期待外れかそれ以上の落胆をしていた空都を置いて、青年は壁に寄り掛けられた大剣を掴み、持ち上げる。



「…マジか」



軽々と持ち上げる青年を見て空都は若干引いた。
これを怪力というにはあまりにも違いすぎる。
これも異界が成せる技か、と思うしかなかった。



「…お前、重くないのか?」

「これ位なら軽いぞ」

「……」



義経、俺は弱いのかもしれない。
こんな大剣俺には持つ事なんか出来るか。

空都はこの場にいない友に心の中で愚痴を吐く。

…うん、嘆いても仕方ないな。



「…そうだ、お前の名前って何だっけ?」

「名前…?そうか、そういえば拙者とは初対面だったか!
拙者の名は関平だ。お前は…?」

「空都って名前だ。最近、異界に来たばかり…って言えば良いか?」



空都がそう答えれば関平は理解した様だ。



「それなら知らない事が多いな」



関平は少し笑いながら大剣を持っていない右手を空都の前に差し出してきた。

その意味をすぐ理解した空都は同じ様に右手を出し、関平の手を握る。



「空都はまだ異界に来て不安があると思うが…。
何か困った事があれば拙者に遠慮なく聞いてくれ」

「ああ、その時は宜しくな関平」



お互いに頷き、軽く握手を交わす。



「意外に手大きいなお前…」

「ああ、拙者は日々鍛えているからな」



それを聞いた空都は関平に密かに対抗心を持ち始めていた事は関平は知らない。

いつか関平の大剣を持ってやる、と燃えていた空都であった。


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