子供の名前は何にしよう。
からっぽの腹を撫でながら考えた。
なにか、光のような名前がいい。女の子だったら、あの人の名前でもいいかも知れない。
なんて滑稽な想像だろう。自嘲の笑みがこぼれた。

…いっそ孕めたらよかったのだ。あの、優しい笑顔で。
主はなぜそれを可能にして下さらなかったのだろう。愛した人の子が欲しい。その、普遍的な願いを、どうして。
子供は、きっとあの人と同じ、優しい目をしているのだろう。私のように臆病かもしれないけれど、私とあの人となら幸せに育ててあげられる。
晴れた日にはピクニックへいくのだ。帽子をかぶり、サンドウィッチを入れたバスケットをもっていこう。それから、花輪の作り方を教えてあげる。
―ああ。
からっぽの腹を撫でる。
描いてしまう眩しい未来。それが訪れることはないのに。
私は子供が欲しかった。彼女と私を結ぶ絆が欲しかった。
この腹で、彼女の遺伝子を育めたならどんなによかったろう。
アダムがイヴを求めるように。あるいはイヴがアダムを求めるように。あの人が、彼女が欲しい。
けれど、林檎を食べても手に入らない愛は、どうすればいいというのだろう。
彼女が欲しい。彼女が欲しい。彼女が欲しい。彼女を縛り付けられる絆が欲しい。
笑う気力もなかった。



―ああ、いっそ孕めたらよかったのだ。




迷走するEの自乗









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