「なぁんかさぁ、」

日曜日の昼時。
てんぷらを揚げながら、のんびりと綱吉が言った。
テレビでは殺人事件の捜査が報道されている。
(執拗な刺し傷から警察は怨恨による犯行と見て捜査を云々)

「似てるよな、エンコンとレンコン」

じゅっ、と、衣をつけたそれを油に落とし、同意を求める綱吉。
六道骸はなんとも言いがたい表情をした。

「初夏の暑さに頭までやられましたか」
「ちがうってば!似てるじゃん、エンコンとレンコン。一字違いだぞ?」
「はぁ。それがなにか」
「はぁ、っておまえ…。ちょっとは感動してくれたっていいじゃんか」

唇をとがらせる綱吉を呆れたようにみやって、骸はため息をつく。
それは綱吉の発想に対してでもあったし、キスしたくてもできない距離に対してでもあった。
弁明しておくと、六道骸はキス魔ではない。
ただ綱吉のとがらせた唇が、とんでもなくやわらかそうで魅力的だっただけのことである。

「…似てませんよ」

運ばれてきたてんぷらを箸で掴みながら骸は呟いた。
ちょいちょいと、つゆにつけてから、口に入れる。
衣はサクサクでとてもおいしい。

「たとえば君はこの数年でとてもてんぷらが上手になりましたけど、」
「本当?!やった!」
「最後まで聞きなさい。…つまりレンコンの扱いは上手になりましたけど、怨恨の方はサッパリじゃないですか。すぐに…いろんなものをひきよせてしまう。不用心もいいところです」

物憂げに骸は言った。
その箸は次のてんぷらを掴んでいる。
口を動かす二人をよそに、ニュースはまだ事件を特集しているようだ。
(凶器は鋭い槍のようなものと見られており、その特殊な形状から犯人の重要な手掛かりとして云々)

「そうかな」

てんぷらを飲み込んで、綱吉は言った。
箸を置いて骸を見つめる。

「そうですよ」
「うーん。…ねぇ、骸」
「なんですか」
「一昨日は、どこいってたの」
「久しぶりにクローム達の顔を見に。相変わらず元気なようで安心しました。クロームが君に会いたがっていましたよ」
「そっか。…ごめんな」

変なことを聞いてごめんな、か、あるいは。

意思を持った鋭い視線に、骸は柔らかく笑い返した。
ごめんな。
その言葉にこめられたものが何であれ、一日は穏やかに過ぎ去っていくのだ。








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