六道骸。
死体の名を持つ彼はひどくぐちゃぐちゃでひねくれていたけれど、こどものように純粋なひとだった。
それこそネバーランドに行く権利さえあるような。
単純な話で、彼のその純粋な硬度が世界の圧力を受け付けなかったから、彼は世界を壊すことでしか存在できなかったのだろう。
それを不幸と呼ぶべきか、オレにはまだ判断できない。
オレにとって幸いでない、と、言い切れば嘘になるからだ。
その硬度を、愛してしまったから。

彼はこどもの純粋さを持ちながら、その特殊な右目ゆえに老成した視点を持っていた。
傲慢でひねくれてこそいても、彼のその内面は、いっそ世界中の誰よりきれいだったのではないかと思う。
そんな彼だったから、どうしたって軸は世界とずれたところにあって、時折ふぅっと、遠くに感じることがあった。
この世界に生きていないという意味で、彼は、名前のとおりに死んでいたのかも知れない。
少なくともオレはそう思っていた。
(どんな馬鹿騒ぎしていても、手を繋いでいても、彼の根っこはどこか深くて遠い場所に繋がっていて、ここにはないんだ、きっと、なんて。)
寂しさの根底にあったものは、今思えば、ある種の神聖視だったかもしれなかった。
それでもオレが彼を、その汚いところまでひっくるめて愛した事実に偽りはない。
それだけは、決して。

そんな彼が本当に死体になったのは、たった三日前だった。

抱いたその身体はいつになく熱かった。
ぐんなりとして色が抜け、次第に冷えて固くなっていくそれに、まず想ったのは彼の死ではなくてその真逆の――、

(むくろ、おまえは今まで生きていたんだね、今までずっと、オレと一緒に生きていたんだ、ね)

そうやってオレは寂しさからの解放を手に入れて、同時に彼を永遠に失った。
死体を愛しているという状況に変化はない。
ただひとつ、決定的に違うのは、もう二度と彼を知覚することはできない。

それだけ。




(彼が愛した死体の話)









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