沢田綱吉は六道骸にとても執着していた。
それはもう、周りがちょっと引くぐらい執着していた。
まだ中学生の頃は「気になる」程度だった骸への関心は、未来から帰ってきて骸を水牢から出し、関わる機会が増えたとたん、アイラブユーに変化したらしい。
酷い迷惑だと六道骸は思っている。
数年の経験を経て、彼はイベントに対する警戒を強めた。
誕生日に手作りで二段のチョコレートケーキが届けられたり、綱吉がクリスマスに手編みのマフラーを持って現れたりしたためだ。
どれもダメツナのあだ名を疑うような出来映えだった。
本人曰く愛。
骸は顔を真っ青にしていたが。
そんな経緯があったから、バレンタインの今日、彼は国外へ逃亡していたのだ。
身を潜めたのは日本にあるマンション。
それは、ボンゴレ側にはおろか腹心にも教えていない隠れ家のうちのひとつだった。
そう、"だった"のだ。

「なのになんで貴様がここにいる…!」
「愛の前に全ての障害は無意味だよ!」

一方は必死の形相でドアを閉めようとする美丈夫。
もう一方は満面の笑みでドアに体を割り込ませている童顔の青年。
いかにも人畜無害といった風の青年相手に必死になる図はいっそ滑稽であったが、その本性を嫌というほど知る六道骸にしてみれば必死になるなというほうが無茶だった。

「ああでも骸、オレ今回はギリギリまで仕事入っててさぁ、何も用意できなかったんだよね」

骸は内心快哉を叫んだが、ドアを押さえる手を緩めるような愚はおかさなかった。
涼しい顔で「残念でしたね」と言ってやった。

「やっぱり骸も残念だと思うよな!」
「は?」

骸の皮肉に対して目を輝かせる綱吉に、彼は嫌な予感が拭えなかった。
ドアを押さえる手に一層力をかけたにもかかわらず、沢田綱吉の体は確実に室内にねじ込まれてくる。
これはなんて恐怖だろう。
数多の拷問にも眉ひとつ動かさない六道骸の背中に、冷や汗が滲んでいた。

「せっかくのバレンタイン、何もなかったら残念だよな。だから今年はオレをプレゼントしに来ました!さあ受け取ってダーリン!」
「いえ結構ですお気遣いなく!!」
「結構ですって了解って意味だよね。じゃあお言葉に甘えて気遣わず自由にやるね!」
「冗談は髪型だけにしろ!!」

重力を無視した癖毛を指して言えば、綱吉は微妙な面持ちで「それはそのままお返しするぞ」と言った。
…この美的センスが分からないなんて、かわいそうな人間だ。

「隙アリっ!」

気が緩んだ瞬間ドアをこじ開けられ、玄関に押し倒された。
小柄な体のどこにこんな力があったのか疑うほどの力で縫い止められ、どんなにもがいても振りほどけない。

「ねぇ、受け取って?」

耳元で甘く囁かれた言葉と、首に緩く結ばれた赤いリボン。
それらに不覚にも胸の高鳴りを覚えてしまった時点で、骸の負けなのだ。

しょうがないじゃないか

骸は嘆息しながら思った。

だって僕は彼を、


なんだかんだでしている










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