「相変わらず君はぐずぐずと煮えきりませんねぇ!」

第一声がそれだったので、綱吉はすっかり疲れてしまった。
おそらく、綱吉が明日の朝のパンをクリームパンにするかメロンパンにするかで、ぐずぐず悩んでいたことに対する皮肉だろう。
こうして、会うたびに悪意を向けてくるコイツの名前は、六道骸という。

「なんで並盛のスーパーにおまえがいるの」
「おや、僕には行動の自由が認められないと?これだからマフィアは」
「あぁはいはいオレが悪かったよ好きにしろ!」

涙目になりながら叫んだ。
美人の皮肉は、正直堪えるのだ。
嫌われている自覚はある。
だけどいい加減歩み寄ってくれ!

「…骸も晩御飯の買い物?」
「ええそうですよ」
「そっか。骸が作るの?」
「いいえ、千種が」

当たって砕けるつもりで話をふったらまともな返事が来た。
会話が成り立ったのは初めてかもしれない。
心なしか骸も少し機嫌が良さそうだ。
ついつい嬉しくなって笑ったら凄い勢いで睨まれた。
顔が赤い。
頭に血が上るほど俺が嫌いなのか。
浮上した気持ちは哀れ海の底へ沈没。
もはや海底にめり込んでいる。

骸は、ふい、と目をそらして、口を開いた。

「…君の家は何ですか」
「え?」
「君の家の夕食は何かと聞いている!」
「ひぃぃごめんなさいカレーですカレーですッ!!」

焦れたような声に慌てて返したらヤツは眉間にシワを寄せていた。
カレーはお気に召さなかったのですか骸サン。

「…僕らは肉じゃがだそうです」
「へ、へぇ、そうなんだ。…肉じゃが好き?」
「それほどでも」
「そっかー」

あはははは。
あまりに会話が続かない。
綱吉は自分のボキャブラリーの少なさを嘆いた。
なんと言ったらいいのか全くわからない。
いたたまれないので、曖昧に笑って現場脱出をはかることにした。

「じゃあ、骸、オレもう行くから」
「なんで、」
「え」

青白い手がオレの腕を掴んでいた。
見上げた顔は、この上なく不機嫌そうだ。

「なん、で、笑わないんですか。さっきは笑ったじゃないですか」
「え?は?」
「やっと笑ったと思ったらまた涙目になったりして、なんなんですか!君はそんなに僕が嫌いか!!」
「えぇえぇぇぇぇ?!」

理不尽だ!
綱吉は心中で叫び青ざめた。
同時になぜだかイライラしてきて、普段なら怖くてたまらない六道骸を怒鳴りつけた。

「むしろおまえがオレを嫌いなんだろうが!!」
「僕がいつ君を嫌いだと言いましたか!いつもいつも一生懸命話しかけてるのに!!」
「はぁ?!」

骸は泣きそうな顔でこちらを睨んでいる。
目尻が赤く染まって綺麗だった。
綱吉はくらりとする頭を押さえながらおずおずと口を開いた。

「まさかさっきの『相変わらずぐずぐず』うんぬんも、」
「会話の糸口を作るために決まってるじゃないですか!」

六道骸の返答がそんなだったので、綱吉はすっかり疲れてしまった。
つまり会うたびに悪意を向けてくると思っていた六道骸は、単にコミュニケーションをとろうと努力していただけ、と。
なんてこった!

「あのなぁ骸…皮肉は友好のツールじゃないんだよぉぉおぉぉ!!」

嗚呼、オレの魂の叫びは君に届くのでしょーか。







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