「怠惰をつかさどるのは最早、熊ではありません」
「へ?」
「ハトですよ。あれほど怠惰な生き物もそうそういない」

うららかな日差しの公園のベンチで、ふんぞり返るようにしてヤツは座っている。
そして馬鹿にしたような声でそんなことを言った。
公園内では小さな子供が駆け回り、母親達はかたまって世間話。
向かいのベンチでは老人がハトにエサをやっている。
たしかにハトは太っているように見えた。
いや、しかし平和だ。

「こんないい日になにを言い出すんだよ、おまえ……」

小難しい理屈で他人をつつきまわすのが、お気に入りの遊びに違いない。
迷惑な。
世界大戦とか真顔で言っちゃうような人間だし。
ちくしょう、この迷惑人間め。

「全部口に出てますよ」
「へー」
「わざとか貴様」

まあ、良いです。
めんどくさそうにヤツは言って、そっぽを向いた。
拗ねるなっつの。

「拗ねてません。なんなんですか君、今日はやたらぞんざいじゃないですか」
「そーかー?」
「いつもならキャンキャン噛みついてくるのに」
「オレは犬かっての…」
「ほらそのツッコミもキレがない」

風邪ですか?
しかし日本にはたしか「ナントカは風邪を引かない」という言葉があったはずですが。

長いセリフを、ヤツはクフクフ笑いながらノンブレスで言い切った。
暗にバカって言われた。
すごいんだかうざいんだか分からない。

「どーせオレはバカですよー」
「おやおや、先程は僕に拗ねるなと言ったくせに」
「うっせ」

こんなうららかな良い日ですら、コイツの中身はわけのわからない理屈で満ちているなら、いっそ悲しく思う。
なにもかもどうでもよくなるような暖かな日差しじゃないか。ねぇ?
うっとりとまぶたを閉じれば、鼻を摘ままれた。

「むっ」
「クハハハハ酷い顔ですよ綱吉君」
「ほはへなあ……」

振り払うのも面倒だったので、そのままにさせておいた。
口があれば息できるし。

「……ハトより君の方がよほど怠惰だ」
「へいへい」

軽く流したら鼻を強く引っ張られた。

「よろしい、その鼻、高くなるように引っ張って差し上げましょう!」
「いだだだだだだ!」

あんまり痛いので振り払ったら、ヤツはようやっと満足げに笑った。
あぁなんて迷惑人間!

「怠惰で結構。他人に迷惑かけるよか全然いいじゃんか!」
「クフフフフ、マフィアのボスらしからぬ発言ですね」
「あーもうおまえ、いっそハトと脳みそ取り替えてこい!」







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