○妄想

ひかりのくに の、前くらい
綱吉が引き取られる前。町で見かけて思わずストカして接触しちゃった骸と、赤ちゃん


綱吉くん(二歳)の足の裏は非実用的な柔らかさで、鼻を寄せると日向のにおいがした。息がくすぐったかったようで、きゃっきゃと声をあげる。
べろりとなめると嫌がるように小さな足で骸の顔を押しやった。
ふにゃふにゃと頼りない足の裏に思わず口元がほころぶ。
(まだアスファルトの上さえ歩いたことのないやわらかな足よ、)
あんまりおかしくって笑ってしまう。
(イバラの道も、泥臭い裏通りも知らないやわらかな足、よ、)
その、地面から体を守るには薄すぎる皮膚がおかしくってたまらないのに、気が付けばこのやわらかさを守ることを考えている。
矛盾していると思う。
土踏まずに唇をあてた。
(この皮膚を分厚くしていくのが、どうか、砂浜の細かく砕けた貝や、グラウンドの砂利であったりしますように。)
(まちがっても、窮屈な革靴の底であったり、異国の乾いた大地なんかではありませんように。)

自分のような人間にも出会わないほど、日向に、安穏と生きればいいと思った。
ボンゴレなんかの宿業も知らないままで、抗って、普通に生きて見せてくれるのではないかと期待していた。
薄茶の瞳の中に、希望を見ていた。

だから、もう二度と会うまい。
自分すら彼の宿業のひとつなのだ。
ずっと、遠くから守る。
この、ばかみたいに非現実的なやわらかさを。







2011/07/07 23:48
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