FREAK OUT | ナノ
反射的に伸ばした腕で、フリークスの喉笛を掴み上げる。
その嫌に細い首を握り潰すように手に力を込めて、頚骨をへし折るまでの動作は、完全なる無意識下で行われた。
「ヒ…………ッ」
「…………人間みたいに鳴くんじゃねぇよ」
生きる為では無い。生きた意味を欲しているのでも無い。
最初から何一つ持ち合わせず、故に、何も残せず、何も成し遂げられないこの生が潰える。いつ訪れるかも分からないその時を手繰り寄せるように、この手は闘争を求める。
だから、その時を今すぐにでも齎してくれないか。
たかが首が折られた程度で死ぬ程度では足りない。自分程度の能力者に怯える程度では足りない。
そのくせ、どうしてお前達は理不尽の体現のように振る舞ってくれるのか!
瞋恚に迸る眼光を引き連れて、貫田橋が駆ける。
フリークスは八本の脚をばたつかせながら、縺れぬよう器用に這い回るが、速度がまるで足りない。よしんばスピードで貫田橋に勝っていたとしても、彼の能力の前で逃げ足ほど意味を成さない物も無い。
「ゲピッ」
甲高い断末魔ごと消し去るように、フリークスの上顎をワープトンネルの中へと掻っ攫う。
司令塔を失った体が崩れ落ちる前に蹴り飛ばし、逃げ遂せた心算でいた別個体へぶつける。バランスを崩したフリークスが不様に床を舐める。その姿勢を立て直す間も与えず、脂肪の詰まった額を押しつけるように頭部を踏み付ける。――否、踏み抜く。
「ギョプ」
色褪せた脳と濁った脳漿が飛び散る。まるで果実のような脆さだと、貫田橋は足元に溜まる残骸を蹴散らした。
――こんなものでは無い筈だ。
――こんなものであっていい筈が無い。
もっと強大で、壮絶で、圧倒的でなければ。この程度のものであるのなら、この程度のものからも守ってやれなかった自分は、一体。
(ぼくのゆめは、おにいちゃんみたいなフリークアウトののーりょくしゃになることです)
(おおきくなったら、おにーちゃんといっしょにフリークスとたたかって、こまっている人を助けてあげたいです)
(おにーちゃんは、ぼくのヒーローです。これからもがんばってください。ぼくものーりょくしゃになれるよう、がんばります)
一体、何だというのだ。
「ああ、ああ!なんてこと!!こんなことって、あんまりだわ!」