「はっ、あぁ、なんで、ぇ……まだ、ほしいっ、たりないっ、ぁあ、いっぱい、なかにだひれぇ!」 「飢えた妖の生気を与えられたんだ。お前も飢えて当然だろう。まだ飢えた凶暴な妖はいくらでもいるぞ」 「ほしぃっ、あ、はやく、いれてぇ……おねが、いします、ぅ、あ、ぁあ、おかし、くなりそ……っ」 いつもだったらとっくに意識はなくなり、妖のされるがままの状態だったのだが今日はおかしかった。自分のしていることも、九十九屋にはしたなくねだっていることも理解している上でしゃべっている。 これ以上性行為をしたくないのに、体は休みなく次の刺激と生気を求めていて苦しい。だから心に反して妖を求めていて、周囲にはいくつも札が落ちていた。それはつまり札に封印されている妖達をもう何十匹も相手にしていて、まだ足りないということだ。 連続して何度も達することができるぐらい飢えていたし、憎い相手に我を忘れて縋るぐらい発情している。いつ終わるのだろう、ということよりも、終わって欲しくない気持ちの方が強かった。 「仲間にできたらと思ったが、ここで飼い慣らした方が利用できるな。捕まえた妖は強くなるし、余興として見るのも面白い」 「っ、あ、あぁあああ!また、いっぱい、っ、はいっれ、るぅ……あ、はぁ、っ、きもち、い」 九十九屋が札をいくつか床に投げつけると、また妖が現れて体の中に入ってくる。満足した妖は出て行って、代わりに補充されるのでそこは常に限界まで広げられ滝のように精液が溢れていた。 勢いのある触手が内壁をぐいぐいと擦りつけ、激しい刺激に自身からまた精液を吐き出す。その吐き出す精液すらも、妖に出されたものではないかと思えるぐらい際限なく出ていた。 「ん……あ?あれ、ここどこだ?」 「なんだ、役立たずの妖が今頃起きたのか。まあちょうどいい、あれを見ろ」 「ああっ、手前!って、臨也!?」 「ふあっ、あぁ、あー……あ、しず、ちゃん?」 突然牢屋内に響き渡った声に顔をあげると、さっきまで眠っていたシズちゃんが目を覚ましていた。もしかしてあのまま起きないのでは、と心配していたので少しだけほっとする。 「おい何やってやがんだ!クソッ、これ外せねえぞ!!」 「術を施してある紙で縛っている。折角だ、折原が妖の玩具になっているのを一緒に見ればいい」 「あっ、あ、やだぁ……み、ないれぇ、しずひゃ、ぁ、んっ、あぁ……おれ、っ、ぐちゃぐちゃれぇ、ひもち、いぃ、のぉ」 確かにいつもシズちゃんは用心棒の癖に妖達に襲われている最中に現れる。だから性行為をしているのをしっかりと見られているのだが、こんな風にじっくりと観察されたことは無い。ただでさえ飢えていて、欲しくて欲しくてしょうがないのにそっちにまで構ってはいられなかった。 これ以上見せたくない気持ちはあるのだが、触手をもっと受け入れようと自ら腰を揺すり喘ぎ唇の端から唾液が垂れる。視線が痛くて、でも少しだけ興奮していた。 「冗談じゃねえ!こんな所からさっさと逃げ……」 「この屋敷には妖封じの結界も張ってあるし、この地下牢には特別に力が抑えられるような造りになっている。逃げられはしない」 「はぁ、っ、あ……しずちゃ、ごめ……」 九十九屋が床に転がるシズちゃんの前に立ち、現状を説明する。すると悔しそうな顔をして、短い手足でジタバタともがくが逃げれるわけがないのだ。 こんなことになってしまったのを即座に謝ったのだが、突然鋭い声が響き渡る。ハッとして顔をあげた。 『うるせえな、帰るぞ』 「……ッ!?」 * * * 「冗談じゃねえ、ぶん殴ってやる!」 朝から調子が出ずに余計な借金を増やしてしまったこともあり、俺はいつも以上にいらいらしていた。それを発散できるのは、相変わらず頭の中を占めている犯人をとっ捕まえて全部吐かせてやるしかないと思ったのだ。 明日は仕事も休みだし、電車賃を払うのは癪だが新宿まで行こうかと駅に向かってすぐに臨也の気配を感じた。手間が省けてラッキーだと意気揚々と微かな匂いを辿ってとあるビルの屋上に辿り着く。 あいつはどうしてか高いところが好きらしく、屋上に追いつめることはよくあった。普通であれば逃げられないというのに、臨也は軽々と飛び降りて俺から逃げる。 だからコソコソと何かするのも、お気に入りの場所でするものなのかと勢いよく屋上の扉を開けたのだが凍りついてしまう。そこにちゃんと本人は居たのだが、結構な音を立てて現れたのも気づかないぐらい夢中で誰かと携帯で話をしていた。 屋上には貯水タンクが置かれていて、その陰に隠れているつもりなのだろうが入口からは丸見えだった。つまり何もかも、声も、はっきりと聞こえたのだ。 「っ、あぁ、ねえ……もう、いいだろ。これ、お願いだからぁ、あ、っ……はずし、たい、の」 「……なッ!?」 壁に寄りかかった状態で座り、ズボンは脱ぎ捨て素足を左右に広げて股間の下に手を伸ばし玩具を抜き差ししていた。太さはかなりのもので、目を疑うような光景だ。 昨晩は必死に声を押し殺していたけれど、今は全く違う。淫らに喘いで周りの事なんて一切見えていない。本当に感じきっている淫乱、という言葉が頭に浮かんだ。 「いい、でしょ?ねえ、ほんとに、っ……イきたいからぁ、あ、ねえ、リングはずしてよぉ、っ」 「なんだ?」 玩具を抜き差しする右手とは違い、左手は股間の根元部分を押さえていた。そこには銀色の物が嵌っているのが遠目にも確認できて、怪訝な表情になる。 あんな場所を塞き止められていたら、苦しくてしょうがないのは男だったらわかってしまう。外して、とねだるのはそれのことかとわかった。 臨也は左肩の上に携帯を乗せて首を傾げ、器用に挟んだまましゃべっている。行為にも夢中だし、落とさないようにするので精一杯なのだろう。 仇敵が現れたことにも気づかず、醜態を晒しているなんて。 「あっ、はぁ、ふっ、う……な、んでもするからぁ、あ、はっ、これ、だけは、おねがい」 電話の相手に懇願していたのだが、そのまま話していると突然激しく喘ぎ始め、喚いた。 「んあぁっ、あ、ふるえ、るっ……んぁ、あひぃぁ、っ、ん、もう、らめぇ、だしたぃっ……から、イき、は、やだぁ!」 瞳から涙を溢れさせ、淫らに腰をくねらせる様子は昨日以上だ。瞳から流れる涙も、多分生理的なものだろうと見てわかる。俺は自然と喉をごくりと鳴らして、何かが訪れるのを待った。 すると、背中を逸らして耳から携帯を離し地面に落とすと叫び喘いだ。 「ひっ、あ、ああぁああ!?イっひゃ、あ、ぁあ、き、もちひぃっ、あ、ぁ……とまんにゃ、いっ、ひぁ、う、から、イき、いいよぉ、あ、はぁ」 あまりのことにこっちが驚いてしまい、慌てて扉の影に隠れた。暫く全身をビクビクさせて浸っていたようだったが、そのうちゆっくりと携帯を拾い通話を続ける。 当たり前だが射精はしていなかったが、傍目から見て達しているのと同じだ。性器もまだ萎えてはいない。 「うぅ、っ、もうやだぁ……いい、でしょ?イったから、これはずしてよぉ、まだくるし、からぁ、なんでもする、からぁ、いっぱい、えっちなことして、にんげんとせっくす、するから、おねが」 「いっぱい……?」 さっきよりも呂律が回らなくなり、まだ電話の相手に縋る様は惨めだ。でも話している内容がおかしいことに気づいた。 まるで誰かに指示をされて性行為をしているような言い方だ。脅されているのではないか、と感じた。 「おれのこと、おもちゃにしていい、からぁ……ぐちゃぐちゃにして、おかしてぇ、だからこれ」 「なんで……」 「あっ、あ、あ!いやだ、せっくす、ないといきていけないからぁ……うぅ、あ、ぁ、わかった、このまま、でいい、っ、ひっ、う」 「クソッ!」 かなり必死に相手を説得しようとしていたのに、途中であっさりとそれを翻した。普段は頑なに意見を変えない臨也が、電話相手にだけは従っている。 その事実が唐突に許せなくなってしまう。俺にはそんな権利なんてないのに、ふざけんなと反射的に体が動いたのだ。 そして臨也の前に駆け寄って声も出さずに携帯を奪い取り、その場で粉々に握りつぶしてやる。怒りは頂点だったがそのままに告げた。 「おい手前ッ!俺とつきあえ!!」 「えっ、え……?どこ、に?」 「好きだっつってんだろうが、クソノミ蟲が!!」 「は……?」 top |