fgo 小さな先輩 | ナノ







※鍵かける程でも無いですが魔力供給してます



「おい」

定期的にある検査が終わり部屋から出た直後、聞き覚えのある声が耳元に響いた。隣に気配を感じ見上げると赤黒い刺青と瞳が視界に入る。
クー・フーリン・オルタ。文字通り、アルスター伝説の勇士であるランサーやキャスター、が反転した__実際はメイヴの願いによって生み出された__姿のサーヴァントである。彼女が動くのを待っているのかオルタはじっと嘉の姿を見続けていた。

「今日は検査長引いた、ごめん。昼食食べた?」
「ああ」

多くのサーヴァントと契約している藤丸立香はカルデアの電力を魔力源としているが、反対に嘉と契約しているサーヴァントは数少ないためパスを通して魔力が供給されている。しかし当然彼女自体に負担がかかるため、サーヴァント達は食事で魔力を取り組み負担をかけさせないように心がけているという。そういえば、今日の昼食は玉藻ちゃんが担当だったか。和食食べたかったな。と頭の片隅で考えながら嘉は自身の部屋まで足を進めた。背後にはオルタが付き添うようにして共に歩いている。最初の頃は何も言わず大股で前を歩くオルタに付いていくのがやっとだったが、今思えば中々の信頼を得られているな、と嘉は改めて感じるのだった。


2人が部屋に戻るや否や、オルタがその大きな尻尾で嘉の体を巻きつけ持ち上げると、装飾など何もされていない白い無地のベッドへと歩み少し乱暴に彼女を下ろした。彼も隣に腰を下ろす。甲冑の様な尻尾が嘉から離れた途端オルタが彼女の肩に自身の額を乗せ、首筋をスンスンと匂っている。何だか甘えてくる犬みたいで可愛いな、と嘉はふと思ってしまった。

「待って、今ボタン外す…」

しかし、この行動は魔力供給をしたいという合図である。他のサーヴァントは食事やパスで魔力が保たれているが流石はバーサーカーといったところか。魔力の消費量は他のクラスよりも膨大であるため普段の供給では足りないのだろう。嘉は着ているシャツのボタンを胸元あたりまで開けた。良し、という合図と同時にオルタは嘉の首筋をガブガブと噛んだ。これが初めてではないので、何度もするうちに噛まれる痛みに多少耐性がついてきたが、皮膚に傷が付く瞬間の痛みにはまだ慣れなかった。嘉の顔がほんの少しだけ歪む。

「ッ…いてて、」

彼の力が強いのか、痛みによって座ることができないのか、嘉の体はゆっくりとベッドへと倒れ込んだ。オルタは首筋から流れ出す血液を一滴も逃すまいというように、唇を付け舌で舐め取っている。

「ん…、」

首筋に当たる吐息と舌の感覚に嘉の体はピクリと反応してしまう。
彼の尻尾がゆっくりと左右に揺れているのが見えた。喜んでいるのだろうか。そういえば彼を召喚した時、恐竜の尻尾が生えている、というのがはじめに見た印象だったな、とぼんやり思い出す。満足したのか、オルタは嘉から顔を離した。彼女の首筋には血液と彼の唾液が入り混じっており、清潔だったシャツも襟辺りがそれで汚れている。しかしいつもの事なので嘉は焦っている様子も一切見せずまた新しい制服に着替えようとベットから離れようと起き上がる。が、オルタは彼女を押し戻し横になると、再び尻尾を胴回りに巻きつけた。抱き枕状態である。

「オルタ、着替えたいんだけど…」
「寝ろ」

まだまだ甘え足りないのか、彼女への気遣いなのか、はたまたその両方なのかどちらも含まれていないのか定かではないが、彼は目を瞑りこれ以上話を聞いてくれようとはしてくれない。

「……はあ」

仕方がない。それなら私も寝るか。そう思い、嘉も目を瞑り暗い世界へと身を委ねるのだった。