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バレンタインネタ。


バレンタインの日も終わりが近づき、物音や甘い香りも静けさを取り戻していく。
世界では男子から女子に渡す文化であるが、カルデアは日本と同じ形式で、女子から男子に渡すものだった。嘉は普段慣れない料理を、立香やマシュ、食堂を担当するサーヴァント達とチョコレート菓子をたくさん作り、日頃の感謝の気持ちとして朝から後輩達と共に渡しに歩き回っていたので、戦闘とは違った疲労感が体に染み込んでいた。
眠たい。とても眠たい。今ならどこでも寝られそうなくらいに。

「さっさと寝んぞ」

喋る小さなぬいぐるみは嘉の肩に乗りながら話しかけていた。彼女もぬいぐるみの言葉に頷き、自然と降りてくる目蓋と奮闘しながら部屋へ向かう。
ちなみにこのぬいぐるみは、見た目通りクー・フーリン・オルタを象ったマスコット的存在である。バレンタインのお返しにと受け取ったものだが、彼本人が用意したものではないらしい。
どっと疲れが現れて重力に従うままベッドへ倒れ込むように寝転んだ。バーサーカーを胸元まで抱き締め目を瞑る。彼女が寝るのもあっという間だった。




目が覚める。嘉は一度起きようとするが、腰回りに何か巻きついていて上手く動けない。振り向けば、すやすやと眠っているのは本物のバーサーカーの姿。

「オルタ、オルタ。私、起きたい」
「…、るせぇ」

いつの間にか、背後から彼女を抱きしめるようにバーサーカーは眠っていたらしい。かわりに先ほどまで彼女の腕の中で一緒に寝ていた小さなバーサーカーの姿はどこにも居なかった。
突然、すん、と、鼻を刺激する、甘い匂い。

「オルタ、あのさ、」

もしかして、ブラウニー、食べてくれたの?

バーサーカーは何も言わぬまま嘉の腰回りに置いていた腕に力を込め、さらに彼女と密着するように引き寄せる。
感謝の気持ちとして受け取ってもらえるだけでいい、捨ててもらっても構わない。後輩やメイヴちゃんあたりからもきっと貰っていると思うし、自分が作ったブラウニーの見た目も不器用で綺麗に出来上がったとは言えない代物だから、私のは食べない気がする。
そう嘉は考えていたのだが、バーサーカーの反応からして、絶対的な確信はないものの、食べてくれたのだと認識した。一方で、バーサーカーは嘉を抱きしめたまた再び眠ってしまった。

この状態だと、起きられないけど、いいか。まだ寝ていよう。時間になったらアサシンや後輩が起こしてくれるし。
嘉は後ろで眠る彼と彼に纏うチョコレートの香りを身に感じながら再び意識を手放していった。

ブラウニー、美味しかったかな。