03




玄関の扉が開く音がした。どうやら屋敷の主である彼が仕事から帰ってきたらしい。
何もすることがなくソファに座ってテレビを眺めていた私は玄関まで移動してお迎えをする。彼は相変わらず澄まし顔で、今回も賭け事で負けた訳ではなさそうだ。

「おや、夜遅いというのにまだ起きていたとは」
「すみません…少し気になるニュースが流れていたので」

それは、ジムリーダーついての情報番組だった。町でトレーナー同士がポケモンバトルをしている光景は幾つか見てきたけれど、ただ強くなりたいというものではないらしい。トレーナーの頂点である"チャンピオン"という存在に憧れるトレーナーは多いようで、そのチャンピオンへ挑む条件として特定の町にある8つのバッジを集めた後、最後の関門である四天王に勝利してやっとチャンピオンと戦える挑戦権を得る、というものだそう。
バッジを集めるには、ジムリーダーと呼ばれる方と戦わなければならず、悪タイプを揃えているギーマさんのように、飛行だったり、電気だったりと、8人がそれぞれ異なるタイプの使い手なのだと、番組ではそう紹介されていた。

「ジムリーダーの方って、ギーマさんみたいに副業しているんだなあ、と」
「寧ろジムリーダーを生業としているほうが少ないと思うぜ」
「そうなんですか。でも、凄いかっこいいです」

ジムリーダーと仕事の両立、それはきっと難しいのだと思うけれど、その人達にとってはどちらとも誇りを持って働いているのだと、テレビ越しから感じとれた。勿論ギーマさんも例外ではない。皆それぞれがきらきらと輝いているような。そんな印象だ。

「仕事といえばなんですけど、ギーマさんが四天王として働いているところでも、そういった賭け事はするんですか?」
「いや、生憎ひとりさ。挑戦者が来るまでの退屈凌ぎにカードで遊ぶ、といったところだったかな。ほら、最近ヴィダも挑戦したあれだぜ」
「あっ!トランプタワーですね」

数日前に彼から教えてもらったトランプタワー。バランス感覚と集中力が重要で、息を止めながら組み立てていたのを思い出す。前回はカードを立てることすら出来なかったけれど。楽しかったのでまた時間が空いた時に挑戦してみようか。と、一瞬、そう先の事を考えてみるも、なにかしら彼の言葉に引っかかる。

「だった、って……」
「ここ数ヶ月、妙にテーブルが揺れるのさ。だからカードやルーレットの動きを邪魔されて困っているんだよ」

はじめはポケモンが繰り出す技の影響で揺れているのかと思っていたそうだが違うらしい。自然災害のひとつである地震によるものだと専門の方から言われたそうだが、あまりにも振動が小さすぎる為、普段のポケモンバトルや体への支障は全くないようである。しかもそれはポケモンリーグの地面のみあらわれるそう。
すると突然、渋々何かを思い出した表情をする彼。

「そういえばあいつらのことを紹介するの、忘れていたな」
「?」
「四天王さ。文字通り、わたしを含めて4人いる。その残りの3人」

心当たりのない人物だと首を傾げた私に、彼は簡易に説明してくれた。
そういえばそうだ。ギーマさんと出会ってから、四天王という言葉は何度か耳にしてきたけれど、具体的な内容までは知らないし、ジムリーダー同様今初めて理解したのだから。
結果、明日丁度ポケモンリーグに挑戦するトレーナーがいるようで、ポケモンバトルが始まる前の空き時間で挨拶をしに向かう、という流れとなった。一体どのような方達なのだろう。チャンピオンに挑む前に戦う存在だから強いトレーナーだと個人的に考えているけれど。しかも普段はお仕事でお忙しいのに、こうして時間を作ってくれたことに感謝しかないので、明日真っ先にお礼を伝えよう。

「気を引き締めて行った方がいい。特にゴースト使いには色々と問いただされるだろうぜ」
「えっ」

四天王と御対面させていただくことに対して若干気分が高揚していた矢先に不安な言葉を伝えられて、ギーマさんに向かってなんとも間抜けな声を出してしまった。その反応が大層面白かったのか、彼はけらけらと笑っている。一方私はごくりと生唾を飲み込んで、既に番組が切り替わっていたテレビの電源を消した。


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