ゆらゆら。ぐらぐら。視界が崩れていく。脚に力が入らなくなって、重力のまま地面へ倒れ込む。
ぐちゃぐちゃ。ずきずき。どろどろ。生温いまっかなそれが、ぽっかり開いたお腹の穴から止まることなく溢れていく。
立ち上がろうとしても、全く動けない。目の前に広がる光が、消えていく。暗い、くらい、くらい。みんなは、後輩は、生きているだろうか。寝てる場合じゃない、追いかけ、なくちゃ。ドクターに、守ってねって、託されたから。先輩として、守ってあげなくちゃ、いけないのに。動いてよ。動いて、お願い。

嫌、私はまだ、死にたくない。死んではいけない。死んでたまるものか。だって、私は、ふたりの後輩を、あの人を___






「授業中だぞー」

ばし。
頭に小さな衝撃と共に×××の意識は目覚めた。
微かな笑い声を耳に、いつの間にか机に伏せていた体を起き上がらせて、見上げる。目覚めさせてくれた相手は、出会ったこともなく、会話もしたこともない、見知らぬ、中年くらいの人物だった。それほど分厚くはない本を片手に持ち呆れた顔で私を見下ろしている。はあ、とため息を吐いて、背を向け歩き出した。次に辺りを見回す。くすくすと、笑っている人達は幼い顔立ちをしており、黒い衣装を見に纏っている。彼女も昔、着た経験はある。これは学生服だ。懐かしい。ふと、点と点が線で結びついたように、彼女は現状を感じ取った。
私がいるこの空間は、学校。周りにいるのは、学生。ならば、起こしてくれた大人はきっと、先生、だろう。

一体どういうことだ。ふたりは、カルデアは、異聞帯は、人類は、守れたのか。私は、死ぬ間際にどこか別の時代へとレイシフトをしたのだろうか。それとも、夢の中、なのか。確かにあの時、“死にたくない“と心から願った。けれど、違う。みんなが生きていないと、意味がないのに。私は、何の為に。

疑問、願望、憂慮、恐怖、不安。さっきと同じように、脚に力が入らなくて、立てなくなって、腹の底からどろどろとした感情が込み上げてくるのを、×××は必死に堪える。誰にも気付かれないように、ぐっ、と。

「先生」

掠れた低い声が教室に響き渡った。





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