03.
会話交じりの朝食が終わると、おもむろにヒナタが立って洗い物を始める。
手伝うと言ったイルーナを制して座らせ、作っておいたコーヒーを渡す。
静かにそうヒナタの言うことに従い両手でカップを持って飲み始め、安堵の息を漏らした。
今日はどんな一日になるだろう?と考えながらヒナタが作業を終えるのを待った。
数分後、洗い物を終えたヒナタと共に愛用のカバンを肩にかけて家を出る。
戸締りをすると今度は村に向かって歩き出した。
木々のアーチのある坂道を歩き進み、川を越えて今度は平たい森を少し歩く。
するとすぐに見慣れた村が村が見えてきた。
小さな村だが、賑やかしいその雰囲気が漂う。
「イル! おはよう!」
「おはよう、マーラ!」
「イル嬢、今日もいい笑顔だねぇ!」
「ふふ、ローおじさんも素敵な笑顔ね!」
「イルーナ! おはよう!」
「おはよう! やけどはどう?」
「だいぶ良くなったよ!」
「よかった! 後でお薬塗りに行くね!」
村に入るなり、イルーナはひっきりなしに村の人々に挨拶される。
同時にイルーナも村人たち一人一人に挨拶をして、以前から体調が悪いものや、怪我をしたものにはその後の様子も聞く。
そんなところがイルーナがみんなに好かれる一つの理由なのかもしれない。
丁度村の真ん中あたりに差し掛かる頃、イルーナはヒナタと別れて、少し村の中心から離れた場所に向かった。
今朝方ヒナタと話していたセラとレイアと言う親子の住んでいる家に向かうためだ。
整ったリズムで扉をノックすると、中から「はーい」元気な声が聞こえてくる。
ガチャっ
っと扉が開くと見慣れた顔が出てきた。
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