ひとりがち! 「おいしー」 「本当に……とっても美味しいわ」 「そう言って貰えると作ったかいがありますね」 食堂の日当たりの良い席でヤムライハ、ピスティ、なまえの三人がのんびりとお茶を飲みながらのほほんと笑っている。 今は丁度昼休憩の時間であり、今日は非番だったなまえが作った焼き菓子をつついている所だった。 「でも、お休みの日なのに、外に出なくてもよかったの? なまえ」 「? ええ、別に用事もありませんし」 「えー勿体ない! 彼氏とかは?」 「いませんよ。……仕事が恋人みたいな物ですしね」 「うわー、そんなジャーファルさんみたいな……あ、そうだ!」 「どうしたの?」 「なまえたん! 八人将の中で誰が好み?」 きらきらと表情を輝かせながら、そう問うピスティになまえは少し苦笑を零して、 「そんな恐れ多い……皆さんとても良い方ですから、選べませんよ」 「そんな事言っちゃってー! ほら、素直になんなよ!」 「そうよ、それに、あの剣術馬鹿にまでそんな事言わなくても……」 「誰が剣術馬鹿だ!」 「……」 「……あ、」 「ちょっとシャルー、乙女の会話を盗み聞きするなんてさいてー」 「いや、俺は、その……っていうか! 俺だけじゃ無くてマスルールもいるんだぞ!?」 わたわたと弁解をするシャルルカンに引っ張られ、マスルールも顔を出す。 それにヤムライハ呆れた表情をすると、 「どうせ無理矢理付き合わせたんでしょ」 「……ッス」 「あ、てめぇ!」 こくりと頷いたマスルールに掴みかかろうとするシャルルカンをなまえはなだめて、そっとお茶を差し出す。 「おお! さっすがなまえちゃん! どっかの魔法馬鹿とは大違い!」 「そっちこそ剣術しか能がないじゃない」 「ああ?!」 「何よ!」 「もー、二人ともやめなよー。折角なまえたんと一緒にお茶してるんだし。ね? なまえたん」 「そうですね……二人とも落ち着いてください。ヤムライハ様もシャルルカン様も、とても素敵な方です。得意な事を磨き抜くのは、素晴らしい事だと私は思いますよ 」 そう言ってにっこり笑ったなまえに、シャルルカンはにやにやと笑いを零して、 「だよなー! なまえちゃんさすがー」 「ちょっと! なまえから離れなさいよ!」 「こんな魔法馬鹿ほっといて、今から俺と――っ!!」 「ナイスマスルール君!」 「……あ、え?」 ゴッ、と鈍い音がしたかと思うと、床にしゃがみ込むシャルルカン。 見れば、マスルールが拳をかまえているので、どうやら彼が殴ったらしい。 手加減はしたのだろうが、それにしたって痛そうだ。 おろおろするなまえに、マスルールは気にするな、と告げると、本当に気にしていないらしい彼は悠々とお茶をすすった。 「〜〜ってえな! 何すんだよ!」 「あんたがなまえに近づきすぎるのが悪い」 「ああ?! ていうかマスルールも近いだろ!」 「あからさまな下心がないだけ良いでしょ」 「不公平だ!」 そうしてまたぎゃんぎゃん始まる喧嘩に、ピスティは溜息を吐いて、 「まったくもー、みんな子供なんだから」 「そういう貴女は、そろそろ仕事に戻らなくてもいいんですか?」 「ええ〜ジャーファルさんそんな固い……」 「もう休憩は終わってる筈ですが?」 そう、にっこり笑うジャーファルに、ピスティの肩が揺れる。そして、素早く身を翻すと、 「じゃあ私もうもどるね〜! なまえたんまたね!」 と、手を振り去っていた。 実に早業だ。 呆気にとられるなまえに、溜息を吐くジャーファル。 「……さて、あの喧嘩を止めて仕事に戻らせましょうかね」 「あ、手伝います……?」 「いえ、結構です。ああ、でも」 「?」 その後に、少しだけ一緒にお茶してくださいね、と笑ったジャーファルに、なまえは同じように笑みを零した。 ひとり勝ち! Y★様リクエストで、「八人将逆は―」でした。 結局、出てるのはシャルとジャーさんとマス+女子組っていう……。 私に逆ハ―を書く才能はありませんでした……。 Y★様、リクエストありがとうございました! お持ち帰りはY★様のみ可です。 20120616 |