眉薬 他
LoveSick
草木も眠る丑三つ時――今日と明日の狭間は霊界への入り口が開きやすく霊が現れやすい、と言う。
お盆に差し掛かるこの時期は特に、だ。
テレビの特番も肝試しや心霊現象、怖い話などを扱ったものがチラホラ見られるように
なるのも、暑い夏ならではのものだろう。
蒸し暑い夏の涼を求めて俺たちも、自然と話題はそういう方向へと向かっていく。
「なぁなぁ、怖い話やろうぜ」
そうやって、話の切り込み隊長になるのは大抵渡嘉敷だ。
6人部屋の古惚けたホテルは、怪談話にはもって来いと言ったところか。
まぁ、明日は試合もねぇし……たまにはいいんじゃねぇ?
夏の高校野球も大詰め、勝ち進んでいくためには、こういう娯楽も必要なのかもしれな
い。
ちらりと横目で隣にいる眉村に視線を送れば、興味が無いのか目を瞑り、既に睡眠モー
ドに突入していた。
「眉村は……?」
「寝てるみたいだから、そっとしておいてやれ」
「りょーかい!」
こうして、眉村を除く5人(俺、佐藤、茂野、渡嘉敷、泉)の怪談が始まった。
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