暑苦しくて目が覚めた。
全身から吹き出した汗でシャツが体に纏わりついて気持が悪い。
汗で張り付いた前髪をかきあげ、いつの間にか蹴飛ばしていたタオルケットを取ろうと起き上がろうとして、ハタと気が付いた。
「てめっ! また勝手に俺の布団に潜り込んできやがったな!」
暑苦しさを増徴させていたもの、ソレは――。
「なんだ、五月蝿いな。まだ夜中じゃないか」
眠そうに目を擦り、さも当たり前のように文句を垂れる。
しっかりと俺の体を抱き枕にして、眠りから覚ました元凶は再び夢の世界へ旅立とうとする。
「おい、寝るな! どけ、暑苦しい!!」
必死に引き離そうと試みるが、吸盤でもついているかのように、くっついたままビクとも動かない。
そのうちに、余計に体温が上昇するのを感じて、とうとうくっつき虫眉村を引き離すのは諦める事にした。
くそ……、それにしても、今夜は特に蒸し暑い。
よりによって今日、クーラーが壊れるなんて、本当についてないとしか言いようが無い。
電源をつけた途端、冷風ではなくて水がダーダーと滝のように溢れてくるなんて、誰が想像しただろう。
「あっちー……」
扇風機なんかじゃとても対応しきれないほどの熱気が渦巻いているこの部屋で、大の男二人が寄り添って寝ているなどと言う状況は何処からどう見ても異常だ。
暢気に幸せそうな寝息を立てているこいつが、今はとてつもなく憎らしく思える。頬を抓ってみても、腹を擽ってみてもちっとも起きる気配がねぇ。
「あーっ、やっぱ鬱陶しい! お前マジでどかねぇと蹴り落とすぞ!」
「……なんだ、さっきからカリカリして。生理でもはじま……ぶっ」
「いっぺんこっから落ちるか?」
「……いや、いい」
寝ぼけ眼を擦りながらアホな事を呟きかけた眉村だったが、俺の裏拳が見事にHITし、起こしかけた身体がグラリとベッドに沈んだ。
全く、男の俺に生理が来るわけ無いだろうが!
もし、来たとしたら百パーセントコイツのせいだな。
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