眉薬 他

LoveSick


高校に入って初めての夏、僕たち聖秀ナインはなんとかギリギリで勝ち進んでいた。

打倒海堂なんて、馬鹿げた茂野先輩の目標。

どんどん勝ち進んでついにそれが現実のものになった。

先輩が海堂戦を待ち望んでいたように、実は僕もその時を心待ちにしていた。

茂野先輩と同じ……あの人に会えるから。


試合当日、僕はオーシャンスタジアムのマウンドであの人と再会した。

バッターボックスで快音を響かせる佐藤先輩。

僕が真剣に野球をしようって思わせてくれた人。

小学校4年のとき、横浜リトルで一緒だった佐藤先輩は、あの時と同じようにかっこ良くて。

僕は、忘れていた自分の気持ちを思い出してしまった。

最初の打席で、僕がバッターボックスに立ったとき佐藤先輩と視線が合って、ドキッとした。

マスクの下から覗くその顔はすごく大人びていて、ドキドキが止まらない。

試合中、僕は不謹慎だと知りつつも佐藤先輩から目が離せなかった。

バッティングも野球センスも全てにおいて先輩は僕らの数段上を行っていた。

でも、僕知ってる。佐藤先輩は茂野先輩しか見ていないって。

佐藤先輩の視線の先にはいつも茂野先輩がいて、茂野先輩も佐藤先輩しか見えてなくって。

僕の中で、嫌な感情が広がってゆく。

結局、試合は茂野先輩がマウンドに倒れたことによって終わりを告げた。

そのときに、泣きそうな顔をして茂野先輩に駆け寄ってきた佐藤先輩に胸が痛んだ。


/ススム




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