『久しぶりに会って話がしたい』
そうメールが入ったのは3日ほど前。
相変わらずの唐突さに些か苦笑しながらOKの返事を出した。
だが――。
「来ねぇじゃねぇか」
約束の時間はとうに過ぎ、辺りは徐々に闇に染まる。
寒空の下待つこと30分。
一向にアイツが現れる気配がねぇ。
もしかして忘れてる、とか?
自分から誘っておいてそれはねぇ、と思いたい。
それかからかわれたか……。
まさか、な。
時間が経つと共に不安はどんどん広がってゆく。
アイツは人をからかうようなヤツじゃねぇよな。
きっと遅れたのは何か事情があるに違いない。
「たく、遅れるなら連絡くらい寄越せっての」
鳴らない携帯を眺め思わず溜息が洩れた。
「遅くなってゴメン!」
「!」
ふと声がして、慌ててそちらを振り返る。
そこには再会したカップル達がいて互いに身を寄せ合い何処かへ行ってしまった。
人違いしてしまった自分が滑稽で、情けなく思えてくる。
本当に忘れてるんじゃねぇだろうな。
ポケットに突っ込んだ携帯をギュッと握り締める。
冷たい北風に晒されたせいで手がジンと痺れてきた。
こんな中いつまでも待つなんてとてもじゃねぇが耐えられない。
限界だ。
諦めて家に帰ろうと一歩踏み出したその時――。
大きなクラクションの音が辺りに鳴り響いた。
ざわついていた周囲が一気に静まり返り、視線が一点に集中する。
「すまない、遅くなって」
乗れとばかりに助手席のドアが開く。
前/ススム