朝起きると、隣には見知らぬ女が眠っていた。
何が何だかわからずに頭が混乱する。
一体どうなっているんだ?
俺は確かに夕べ薬師寺と一緒にいたはずだ。
そう言えば、夕べランプでそんな願い事をしたような気もするな……。
あきらかに昨日までは無かった胸板の膨らみ。何処となく柔らかそうな肌。
何となく触れてはいけないもののような気がして、頬に伸ばした手を慌てて引っ込めた。
それにしても、本当に女になってしまったんだろうか?
胸とかも全て造り物で、俺を動揺させて面白がっているだけなのかもしれない。
いや、しかし薬師寺がそんな低レベルな事をするとは思えないし……。
悶々と考えていると突然薬師寺がモゾモゾと動き出した。
一気に高まる緊張感。
「ふぁあ、どうしたんだよ変な顔して」
怪訝そうな顔をして眉を顰める。
いつものようにベッドを抜け出し伸びをする姿はいつもの薬師寺と変わらない。
「……薬師寺」
「あ? なんだ?……っ!?」
その膨らみが本物かどうか確かめたい衝動に駆られて後ろから抱き締めた。
掌に柔らかい感触が触れる。
「なっっ! 何すんだっ、このヘンタイっ!!!」
ガスッと鈍い音と共に頭頂部に痛みが走る。
目がチカチカするほどの衝撃に軽く頭を振って焦点を合わせる。
「朝っぱらから気持ち悪りい事してんじゃねぇっ!」
「い、いや……本当に女になったのか確かめようと……」
「女? 俺が女になるわけ……!」
そこまで言って薬師寺の顔色が変わる。
恐る恐る自分の服の中を覗き込みふらりとよろめいた。
「大丈夫か?」
「あ、ありえねぇ。こんな事ってあるのか」
信じられないモノを見たとばかりに首を振る。
わかっていた事だったが、現実に起こるとは思っていなかっただけにショックはでかいらしい。
「仕方無い。今日一日お前はここにいろ。熱があるって事で誤魔化しといてやるから」
「は? 何言ってんだ。今日は練習試合があるだろうが。このくらいで休めるか!」
「おい、まさかお前その身体で出る気じゃ」
「当たり前だ。こんなくだらない事で試合を休むなんて俺のプライドが許さねぇ」
グッと拳を握りしめ、窓の外をチラリと眺める。
「悪い事は言わん。今日は休め」
とてつもなく嫌な予感に駆られる。
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