12月31日。
大晦日の夜は紅白を見ながら年越し蕎麦を家族で食べると毎年決まっていた。
でも今年は少し違う。
俺の横には血の繋がった家族じゃなくて、いつもと変わらぬ仏頂面した恋人の姿。
吐く息は白く、周りには神社へ向かう参拝客の姿。
「まさか年明け前から神社に並ぶはめになるとは思わなかったぜ」
「いいじゃないか。たまには」
そっと手を握られ反射的ぬ顔をあげた。
「ま、眉村!」
「なんだ? 暗いから構わんだろう?」
僅かに眉村の表情が和らぐ。
「どうせこの人混みじゃ誰も見ていない」
確かにそうかもしれないが恥ずかしいことには変わりない。
何か言い返そうとしたその時――。
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