ここは、一体どこなんだ?
薬師寺は、誰もいない海堂の寮専用医務室で目を覚ました。
頭がなんとなく重たくて、ズキズキする。
無機質な天井をボーっと眺める。
俺は、一体誰なんだ……?
なんで、こんなところに寝かされているんだ?
色んな疑問が浮かび上がるが、どれもはっきりとせず、頭のもやが広がって行くばかり。
そんな時医務室のドアが開いて、一人の青年が現れた。
「目が、覚めたのか」
「ああ」
低い声で言われ、とりあえず返事はしてみたものの、それっきり黙ってしまった彼に薬師寺は首をかしげる。
「お前は階段から落ちて頭を打ったんだ。精密検査じゃ異常は見当たらなかったが、記憶障害が出る可能性があるらしい」
「へ? あ、ああ。そうかよ」
無表情のまま突然話しはじめては、また口を噤んでしまい、薬師寺は困惑した。
(なんだぁ? コイツ。宇宙人と話してる気分だぜ)
訝しげな表情をする薬師寺に、眉村は正直戸惑っていた。
まさか自分が宇宙人呼ばわりされているとは夢にも思わず、黙ってジッと彼の様子を観察する。
「あのさ、俺……自分が誰なのかよく覚えてないんだ。悪いけど、教えてくれないか?」
恐る恐る尋ねれば、眉村は目を細めてその事実を理解しようとしていた。
長い長い沈黙の後、眉村はようやく事態を把握し、今自分が知っている限りの事を話して聞かせた(さすがに自分が恋人である事は話せずにいたが)
前/ススム