眉薬 他
LoveSick
太腿に感じる頭の重さと手のひらの温もり。
気にしなければ良いだけの話だがどうしても気になってしまう。
「……おい、反対向け」
俺がそう言うと「何故だ?」と返って来る。
「何でって、股間の前に顔があると気になるんだよ」
「あぁ、そういう事か気にするな」
気にするなって……俺が気になるんだ!
相変わらず表情の薄い顔で早くやれとばかりに俺を見上げる。
何だよ、俺だけ意識してるみたいでなんかムカつく。
「ちっ、わかった。やればいいんだろ」
渋々中を覗き、耳掻きを始めると眉村はゆっくりと瞳を閉じた。
外の嵐とは対照的に穏やかな空気が漂う。
「なぁ……春の選抜終わったらさ二人で花見にでも行こうぜ」
眉村からの返事は無い。
「眉村?」
「……」
聞こえてくるのはスースーと規則正しい寝息。
どうやら寝ちまったらしい。
厳しい練習の毎日で疲れてるからな。
俺の前では気を許してる証拠だ。
「ま、たまにはいいか」
終息に向かいつつある嵐、うっすらと差し込む暖かな光に目を向け俺はそっと短い髪を撫でた。
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