「おい! てめぇ……また俺の知らないうちに付けやがったな!!」
「何のことだ?」
バンッと扉を勢いよく開き、備え付けのソファで雑誌を読んでいる恋人に詰め寄る。
カッカしている俺とは対照的に、眉村は涼しい顔。
それが余計に腹が立つ。
「”何のことだ?”じゃ、ねぇよ! つけただろ! ここ」
グイッと制服のボタンを外し、襟元にある充血した痕を見せる。
目の前のコイツは、それを一瞥し、たいした興味も無さそうに
「なんだ、そんな事か」
と呟いた。
「そんな事……じゃ、ねぇだろ! あれほどいつも見える場所には付けるなっていって
んのに!」
「約束は守っているだろ?」
スッと雑誌を置いて立ち上がり、俺の前に立つ。
自分よりほんの少し高いせいもあり、俺は思わず半歩あとづさった。
「制服の襟で見えないはずだ」
「っ!」
ごつくて長い指先が、俺の首筋をツツ……と撫でる。
昨晩、付けられたと思われるキスマークを指でなぞり、ジッとそこを見つめる。
熱を含んだその視線にふと昨日の情事を思い出し身体が自然に熱くなる。
「あんま見るな!」
自然と熱くなった頬を悟られぬよう身体を捩る。
俺の行動は全てお見通しとばかりに、眉村が薄く笑った。
「なんだ? 見られて感じるのか?」
「バッカじゃねぇの!? んなわけ……ッ!!」
耳元で囁かれ、ゾクリと背筋が粟立った。
否定したいのに、耳の穴に舌を捩じ込まれて甘い痺れにも似た感覚が全身を駆け巡る。
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