眉薬 他
LoveSick
「じゃぁさ、だれからやる?」
「しゃーねーな、俺がトイレの次郎さんの話、してやるよ」
ふふん、と鼻を鳴らし得意げに茂野がしゃしゃり出る。
「トイレの……」
「次郎さん?」
俺達は一斉に茂野を見た。
しばしの沈黙。
「プッ、アハハハ!」
次に出たのは怪談話にはそぐわない爆笑の渦だった。
「なんだよ! なんで笑うんだ」
「ふふ……、だって吾郎君、トイレの次郎さんって」
「なんだ、そりゃ。花子さんのパクリか?」
「ひー、くるしいっアハハハっ、次郎さんだって!」
笑われたのがよほど予想外だったのか、目を白黒させて不思議そうに俺たちを見比べる
茂野。
渡嘉敷に至っては、笑いすぎて目じりに涙すら浮かんでいた。
「トイレの花子さんってさ……小学校の頃流行ってなかった?」
「そういえば、流行ってたね。でも、次郎さんなんて聞いたことないよ」
「同感〜。ってゆーか、何故次郎? 太郎じゃねーの?」
口々に言われ、茂野はあからさまにムッとした表情をする。
「いいんだよ、次郎さんで! とにかく大人しく聞けっつーの!!」
仕方なく俺達は体勢を直し、茂野の話に耳を傾ける事にした。
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