「くだらない嫉妬はするな。俺は、お前しか見てないんだから」
「なっ」
スッと唇を離し真っ直ぐに見つめられると、自然と頬が赤くなる。
「恥ずかしいこと言ってんじゃねぇよ、馬鹿っ」
プイッとそっぽを向く薬師寺のくしゃくしゃっとかき回すと、ムッとして睨みつけてくる。
「やめろ! 折角セットしたのにボサボサじゃないか」
「気にするな。どんな頭でも俺は構わん」
「俺が構うんだよ!」
「さっきからバカの連発だな」
「うるせぇ! バカだからバカって言ってやったんだ」
フンッとそっぽを向く彼に、眉村はクックックと肩を震わせた。
「何が可笑しい」
「あぁ、すまない。やっぱりお前はその顔のほうがよく似合ってる」
「は?」
「ムスッとした顔は似合わないと言ってるんだ」
チョンチョンと眉間をつつかれ、ハッとした。
確かに先ほどまでの嫌な気分はどこかへ消え去ってしまっていた。
「悪かったな」
「ん? 何の話だ?」
「何でもねぇよ」
ポケットに手を突っ込んで再び大通りに出ると人の波に逆らって歩き出す。
「おい、今度は何処に行くんだ?」
彼の言葉を無視して突き進んでいくと、外れのほうにひっそりとした小さな公園があった。
そこの一角に腰を降ろすと薬師寺は緩く息を吐く。
「……」
眉村も隣に腰掛けると、ゆっくりと彼を見つめた。
「やっぱ俺、人ごみ苦手だ。落ちつかねぇ」
「同感だな」
互いに視線が絡むと自然と笑みが零れてくる。
「あ、そうだコレ」
「じゃぁ、俺も」
すっと差し出されたプレゼントを受け取ると、思い出したように自分も用意していたプレゼントを眉村に渡す。
「せぇので、開けようぜ」
「あぁ」
互いのプレゼントを見つめ、そっとリボンに手をかける。
少しずつ露わになってゆくそのプレゼントを見て、二人は「あっ」と同時に声を上げた。
そこにあったのは、色も形も全く同じセーター。
「なんでお前」
「同じものとは、驚いたな」
互いの手にあるものを見比べてどちらかともなく笑い出す。
「はは……なんだよ、なんでコレ選ぶんだよ」
「そっちこそ」
「俺達似たもの同士って事か?」
「だな」
苦笑して空を見上げると、白いものがチラホラと舞い落ちてくる。
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