「おい! 何を怒っているんだ」
食事を終えて女の子達と別れた後、むすっとした表情のままズンズン歩いてゆく薬師寺に声をかけた。
「別に、怒ってなんかいねぇ」
「怒ってるだろ、その顔は。眉間に皺が寄ってる」
「……」
言われて初めて自分が怖い顔をしていることに気がついた薬師寺は、小さく「なんでもない」とだけ答えた。
「なんでもないわけ無いだろ?」
「うるせぇな! なんでもねぇっつったら、何でもねぇんだよ!」
思わず声を荒げて、周囲の視線に気がつきハッと口を噤む。
いつから自分はこんな心の狭い人間になってしまったのだろうと、虚しさがこみ上げてくる。
別に予想できない事態ではなかった。
席は四つ空いていて、混雑した店の中二つしか使っていないのなら相席になる可能性はいくらでもある。
着飾った可愛い女の子が二人、隣に座っている。
いつもなら、ほんのり香る甘い香りに少しくらいはドキッとしたのだろうが今日は違った。
今夜くらいは誰にも邪魔されたくなかったのだ。
「……」
相変わらず眉間に皴の寄っている彼の腕を掴むと眉村は人気の無い路地裏に連れて行き強引に口付けた。
「!!!! ん……んぅ」
人に見られないようコートで隠しながら何度も何度も深い口付けを繰り返す。
「は、ハァハァ……バカッ! 何す……んんっ」
発せられる言葉も全て消し去るように角度を変えては舐めたり吸ったりを繰り返す。
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