息を切らして南口の階段を上ってゆくと、寒さで鼻の頭がほんの少し赤くなった眉村が彼に気が付き微笑んだ。
「悪い! もっと早く連絡入れればよかったな」
「フッ構わん。こうして会えたんだからいいじゃないか」
すっとさり気なく差し出された手に自分の手を重ねると、同じようにヒヤッとしていて互いに苦笑する。
「お前、何時から待ってたんだ」
「六時からだ」
「ハハッ、俺もそんくらい」
「でも、会えたんだからいいじゃないか」
「ん、そうだな。折角のクリスマスなんだし特別に許してやるとするか」
間違っていたのは自分かもしれないと思う気恥ずかしさを隠すようにはにかんで笑うと眉村もフッと微笑した。
いつもは見せない表情に一瞬見とれてしまい、薬師寺は思わずサッと視線をそらす。
「どうか、したのか?」
「えっ!? いや、なんでもねぇよっ」
ほんのり染まった頬を隠すようにジャケットに顔を埋めると、繋いでいた手を離しスタスタと歩き出す。
「おい」
「飯! 食いに行こうぜ。俺、腹減ってんだよ」
お腹を擦って、適当に誤魔化すと眉村の言葉を聞く前に歩き出す。
「どこか予約でもしてるのか?」
いつの間にか追いついてきた眉村に尋ねられ彼は「まさか」と呟いた。
実は予約も考えたのだが、男二人で、と言うのがどうしても気になって止めてしまったのだ。
周りはきっとカップルだらけで自分達は浮いてしまうかもしれない。
そう考えると押しかけた番号も途中で手が止まってしまう。
「まぁ、どっかその辺のファーストフードでいいだろ?」
そのほうが気楽だし。
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