「うるせぇっ! 俺とお前じゃ体のつくりが違うんだよ」
「ふっ、言い訳するとは珍しいな」
ムッとして何か文句でも言ってやろうかと思ったが、それはヤツが後ろから抱きしめてきたことによって阻止された。
「ちょっ離せ」
「大丈夫だ。ココには俺たち二人しかいない」
そっと耳元で囁かれゾクリとした。
「ほ、ほら! 俺今すっげぇ汗かいてるし」
「汗のにおいなんか気にするな」
俺の腰を引き寄せたままベンチに座ると汗で張り付いた髪を指で弄り出す。
「気になるっての。つーか、人の髪で遊ぶのは止めろ」
「フッ、相変わらず素直じゃないな」
「うっせぇ。……あ!」
俺たちの目の前には白々と輝き出した地平線とそこから少しづつ顔を覗かせる太陽が映し出されている。
「この太陽をお前と一緒に見たくてな」
「フン、どうせ見せるなら初日の出に誘えよ……バカ」
うっすらと明るくなってゆく空。
凄く綺麗に見えた。
「そうだな。来年は初日の出を拝もうか」
そっと手を繋ぎ視線が絡む。
「来年だけじゃなくてコレからずっとだ。忘れんなよ?」
「あぁ、そうだな」
見詰め合ってそっと唇を塞がれる。
心地よい感覚に身を委ねながら、今年こそは少しでもコイツに近づけたらいいと思うのだった。
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