眉薬 他
LoveSick
それを眉村は軽々と平地と変わらないスピードで上ってゆく。
俺はというと、眉村についていくのが本当に精一杯だ。
全然頂上が見えない石段に途中僅かに眩暈を感じた。
ハァハァやべぇ、このくらいで息が切れるなんて。
「もうばてたのか? もう少しで頂上だから」
頑張って上って来い。
それだけ言うと眉村はさっさと上に走って行ってしまった。
くそ、やっぱりアイツは化け物と言われるだけのことはある。
体力といい、気力といい俺とは格が違う。
だからといって、俺もそんなのを言い訳にはしたくねぇ。
海堂の頃から追い続けていた背中はやっぱり俺よりもずーっと遠い所にあって、手が届きそうで届かない距離に居る。
プロになってもやっぱりアイツは俺の目標だということを実感させられてしまった。
いつか、俺もあの背中に追いつく日が来るんだろうか。
それはわからない。
いろいろなことを考えながら再び走り出し、ようやく頂上が見えてきたところで、眉村が肩を貸してくれた。
「ハァハァ……やっぱ、すげぇなお前」
「鍛え方が足りないんじゃないのか?」
余裕の表情で僅かに笑う。
さっき、自分がまだまだだって自覚したばかりだったから余計に腹が立った。
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