眉薬 他
LoveSick
佐藤先輩の視線の先には茂野先輩がいて、僕なんか見ていない。
「じゃぁ、僕達そろそろ行くから」
くるっと踵を返して、去ってゆく先輩。
「佐藤先輩!!」
僕は思わず呼び止めてしまった。
くるっと振り向いて僕をじっと見てる。
言いたい。けれど言えない。
「……地区大会、頑張ってください」
違う! 本当はこんな言葉が言いたいんじゃないのに。
先輩は柔らかに笑って、手を振った。
ポンっと誰かが僕の肩を叩く。
振り向くと茂野先輩だった。
「清水。寿也は、俺んだから」
ニッと笑って茂野先輩は前を行く佐藤先輩の元へ走ってゆく。
肩を並べて歩く二人。
その後姿が見えなくなるまで、僕は動けなかった。
ねぇ、佐藤先輩……。
僕、先輩のこと好きでいてもいいですか?
僕の思い、いつかは気がついて欲しい。
だけど、今は先輩と同じグラウンドにいられるだけで幸せ。
だって、こんなに近くで見れるから。
僕の恋はまだまだ実る気配は無いけれど、それでも僕は佐藤先輩の側にいたいんだ。
前/ススム