眉薬 他
LoveSick
僕は、試合中ずーっと先輩を見つめていた。
キャッチャーで、しかも4番バッター。先輩はすっげぇ輝いて見える。
でも、僕はあることに気がついてしまった。
先輩は、いつも茂野吾郎のことを見つめてる。
ベンチにいるときは、二人で中むつまじく見詰め合って笑いあってる。
ひょっとして、佐藤先輩は茂野先輩のこと、好き……なのか?
練習が終わって、僕たちが戻る時間がやってきた。
佐藤先輩がまっすぐに僕のところに来てくれた。
「また、おいで清水。待ってるからさ」
すっと差し出された手。
戸惑いながら触れると熱かった。
ぎゅっと握った手に力が入る。
この手を本当は離したくなかった。
ずっと佐藤先輩の側にいたい。
あの頃からずっと好きだった。
そう伝えたかった。
けれど、そんなこと言えなくて。
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