眉薬 他

LoveSick


「薬師寺〜、やっぱ俺たちこんな焦げたの食えねぇよ。 金も無いし。腹減った〜」

食堂の向こうで渡嘉敷たちのブーイングが聞こえてくる。

「はぁ……、仕方ねぇ。 作るしかねぇか」

「……お前が、作るのか?」

近くにあったエプロンを付けて、あらかじめ炊いてある飯を確認。

とりあえず余り物でチャーハンくらいなら何とかなりそうだ。

「なんだよ、文句あるのか? 飢え死にするわけにはいかねぇだろうが」

そもそも、眉村に厨房を任せた俺が悪かったんだ。

適当に材料を切っていると隣から「ぉお」とか「凄いな」とかって呟きが聞こえてく
る。

「てめっ、気が散るから向こう行ってろ!」

至近距離で見つめられ、うっかり自分の指を切りそうになる。

「何故だ? 俺はただ見てるだけだ」

「だ〜か〜ら、それが気が散るって言ってんだよ!」

なおも覗き込んでくる眉村を厨房から蹴り出して、再び材料を切り始める。
「薬師寺〜、エプロン似合ってるな〜」


「薬師寺の手料理か、うまそー♪」

「〜〜〜っ、お前ら……覗き見する位なら手伝え!!!」

睨みを利かせると皆顔を見合わせて肩を竦めた。

「だって、俺包丁持った事ねぇもん」

「あ、俺も俺も!」


「……」

ココにはまともに料理できるやつはいねぇのか……。

酷い虚脱感と疲労感に襲われながら、暢気に温泉旅行にいっちまったおばちゃんたちを
恨めしく思うのだった。

/ススム




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