「先輩、これから時間ありますか」
「え、まぁ空いてるけど……どうか、したのかい?」
不思議そうな表情を向けてくる先輩に、声を掛けた後のことを考えてなかった俺は言葉に詰まる。
「……清水?」
「あの、久々にリトルのグランド行ってみませんか?」
「いいけど、この格好ではちょっと」
あ、ハハッ確かにそうだ。
俺、何言ってんだろう。
ずぶ濡れの先輩に対して言う台詞じゃないよな。
我ながら馬鹿な事を言ってしまったと、後悔が押し寄せる。
「すみません、おかしな事言って。今のは忘れてください」
「いや、僕は構わないさ。着替えてからでいいなら、付き合うよ」
「えっ!?」
マジ!? 信じられない。
「じゃぁ、着替えてくるから」
ニコッと笑い手を振って、小雨の中を走っていく先輩。
棚ぼたってこういうことを言うのかな。
雨は昔から嫌いだった。
それは今でも変わらないし、たぶんこれからも変わらない。
だけど、嫌なことしかないと思っていたけど、この夕立が無かったら、佐藤先輩と会うこともなかったんだ。
そう考えると、あながち雨も悪くないのかも知れない。
雲の切れ間から現れた大きな虹を見ながら、すがすがしい気持で俺も一歩を踏み出した。
2008.9.28 再録
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