「ま、適当に頑張るよ」
ヒラヒラと手を振って、眉村の側へ。
「ぶっ・・・! 眉村・・思いっきり平手打ちの跡付いてるよ?・・・一体なに言ったのさ」
「佐藤には、関係ない。気にするな」
未だにジンジンする左頬を押さえながら、寿也に背を向ける。
開始の合図とともに、両者一歩も譲らないバトルが続き、寿也が下になればすぐに返って眉村を組み敷くということが数回繰り返された。
周りの応援もみなヒートアップして二人の勝負の行方を息を呑んで見守った。
流れが一気に傾いたのは、試合終了まで後一分をきった頃。
寿也が縦四方固め(正常位のような体位)に持ち込んで、逃げられないように眉村の両足を自分の足を絡ませて封じた。
なおも抵抗を続ける眉村に、寿也はさらに柚車締という技を掛けた。
「うぐっ・・・!」
この技は、片腕を相手の首の後ろに通し抱え込み、もう片方の手首を相手の喉元に差込み上から圧迫する技で、まともに食らったら頚動脈が締まって失神するほどの効力があるものである。
気管を締め上げられて、息苦しくなった眉村は堪らずギブアップをした。
こうして、授業の一環として行った寝技乱取りは、寿也の優勝で幕を閉じた。
「もう、こんな授業絶対嫌だからなー!!」
吾郎と、薬師寺の叫びは先生に届いたかどうかは、なぞである。
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