そうこうしている間に、試合は進み薬師寺の番になった。
試合開始直後から緊張感の掛けるその顔に苛立ちを覚えた薬師寺は彼の首の後ろに腕を回して上半身を抑え、足で下半身固定した。
館内からはおおっとどよめきが沸き起こった。
「腕ひしぎ十字固めを決めるとは、薬師寺もかなりのSだね」
寿也は場内の様子を見ながらポツリとつぶやく。
この技、攻める相手が全身を押さえ込み腕の関節を思いっきり引き伸ばすためかなり痛い。
関節技としては、相当なものだろう。
(たくっ、阿久津のやつ、早くギブしろよ……)
そう思いつつ、締め上げる腕をさらに強める。
阿久津からしてみれば、彼の股間が自分の肩に当たっているというのがなんとも言えず、夢のような世界に逝きそうになる。
「いッ…痛気持ち良い☆」
「………!! 気持ちわりぃ事言ってないで、さっさとギブしろっ!」
「あっあんっ!」
さらに腕を締め上げると、部屋中が凍りつくような声を上げ、堪らず薬師寺の蹴りが炸裂した。
「・・・・ったく。気持ち悪りぃ」
悶絶している阿久津を睨みつけながら、薬師寺は蹴り上げた自分の足を祓った。
勝ち抜き戦となっているため、寿也は順調に勝ち星を挙げて行く。
薬師寺の第2戦の相手は市原だった。
薬師寺と対峙した市原はふと胸元に目がいってしまった
前/ススム