昨日渡された、試合の相手は寿也で吾郎はとてつもなくいやな予感がしていた。
「薬師寺はいいよなぁ。眉村じゃねぇし」
「まぁな」
(アイツと当たったら、それこそ何されるかわかったもんじゃねぇよ。けど、相手は阿久津なんだよなぁ……すっげぇイヤ)
吾郎の言葉に、薬師寺ははぁっと小さく息を吐いた。
ちらりと、眉村のほうを見れば、気合十分、いつもの無表情がさらに強張って、誰も寄せ付けない雰囲気を醸し出している。
(うっわ、以外によく似合ってるじゃないか)
一瞬その姿に見とれてしまいドキッと胸が高鳴る。
目が合って薬師寺は慌てて視線を逸らした。
「それにしても、胴着の下にシャツくれぇ着させて欲しいよな?」
「同感だぜ。なんかスースーしていやだ」
「何言ってんのさ! 二人とも。柔道着の下がシャツだったら、動きにくいじゃないか!」
二人の会話に、寿也が勢いよく口を挟む。
「寿の場合、どうしても目的が違うような気がするんだけど……」
「まぁ、本当なら下着も着けちゃダメらしいから、それを考えれば、シャツを着ないくらいはまだマシだ」
「確かに……」
「僕としては、下着ナシのほうがヤる気出るんだけど」
寿也の言葉に、二人は引きつり笑いを浮かべるしかなかった。
そんな会話をしているうちに、先生がやってきて授業が開始される。
ルールは簡単。今日やる試合は寝技乱取と言って、立ち技一切禁止の寝技のみの勝負だ。
二人で背中合わせに座り、用意始めの合図で技を仕掛け相手をねじ伏せたほうが勝ちになる。
AリーグとBリーグのトーナメント方式で、試合は基本4分。技を掛けられて25秒で立ち直れなかったら負けになる。
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