眉薬 他
LoveSick
結局、その日は夕暮れまでそこに居て暗くなってから俺達は海岸に戻りコッソリと岐路に着いた。
なんだかんだ言いながら、俺のことを気遣ってくれた先輩の優しさがほんの少し嬉しかった。
「よぉ、大河! お前海で水着が流されたんだってな」
翌日、練習に出た俺に、浴びせられた最初の一言。
藤井先輩のニヤニヤした笑顔に俺は瞬時に先輩を睨み付けた。
「アハッ、悪い悪い、つい口が滑っちまって、アハハ」
「アハハ、じゃないっすよ!! 先輩!」
俺の気も知らないで暢気に笑ってる先輩が恨めしい。
くそっ、一瞬でも優しいとか思った俺が馬鹿だった!
「楽しかったからいいじゃねぇか。 また行こうな、海水浴。今度はちゃんと紐が付いた水着持っていけよ〜」
「二度と先輩とは行きませんから!!」
ニヤニヤ笑う茂野先輩の足を思いっきり踏み付け、本気で二度と行くまいと誓った。
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