「何を食べているんだ?」
焼肉をたらふく食って、車に戻ると眉村がそう尋ねてきた。
「何って、ガムだよ。口直しに」
「そうか……半分くれ」
目を細めて難しい注文をする。
ガムは俺が食っているやつ一枚しかない。
「はぁ? 半分なんて……」
無理だ。
そう言おうとした瞬間、シートに押し付けられ顎を掴まれた。
――え?
っと思った時には舌が口腔内に侵入してきた後で、口の中のガムを絡め取るように這い回る。
「ちょっ、いきなり何する……ぅ……んっ」
クチュクチュと卑猥な水音を響かせ吐息と共に舌が絡んでくる。
次第に深く貪欲になってゆく口付けに戸惑いを覚えつつ懐かしい感覚にゾクリと背筋が粟立った。
「んっ……は……っぁ」
鼻から抜けるような声が洩れ、じわりと腰が揺れた。
それに気を良くしたのか、眉村の手が太腿の付け根を弄り始める。
「あっ! バカッ、ここ駐車場だぞっ」
「大丈夫だ、暗くて見えない」
「そう言う問題じゃ、ねぇだろっ……うぁっ」
構わずシートが僅かに倒れ覆いかぶさるように眉村が近づいてくる。
ズボンの中に侵入してきた手が慣れた手つきで自身に触れ腰が大きく跳ねた。
「嫌がってる割にこっちは反応してるんだな」
「……っうるせ! お前があんなキスするからじゃねぇか」
緩々と感じる部分ばかりを攻められ息が荒くなる。
そんな俺の顔をジッと見つめ、眉村は嬉しそうに鼻をヒクつかせた。
「馬鹿っ、そんなに見るな」
「なぜだ? 今の薬師寺はとてもイイ顔をしている」
「……っ! ぁっ駄目、だっ健……っココじゃ」
見られていると言う羞恥からいつもより余計に感じてしまいあられもない声が洩れた。
「じゃぁ、次は何処へ行きたいんだ?」
「――え?」
スッと身体が離れ、篭っていた熱が僅かに逃げる。
ココでいきなり手を離されるとは思っていなかった為、間の抜けた声が洩れた。
鼻をヒクヒクさせながら、見つめてくる。
「〜〜〜っ」
コイツ、絶対に確信犯だ。
この状況で何処に行きたいなんて……。
「いちいち聞くな馬鹿っ! 今夜はお前がリードしろって言ったろ?」
「フッ、そうだったな」
「今日はお前に合わせてやるけど、明日は一日中俺に付き合ってもらうからな!」
「あぁ、わかった」
身体を起こして体勢を整えるとそっと手を繋ぐ。
互いの手の温もりを感じながら、車は再び動き出した。
前/ススム