「本当にそうかな?」
「うわっ!?」
いきなり、佐藤が湧いて出て、俺も眉村も絶句した。
「なっ、どっから入って来たんだ。ノック位しろよ」
「したよ。したけどお取り込み中みたいだったから」
あっさりと言ってのける佐藤。
つか、取り込んでるのわかってたら入るなよ。
ふと、自分の今の状態に気が付き慌てて飛び起きた。
その拍子に俺の上に馬乗りになってた眉村がゴロゴロと転がる。
「それよりさぁ、そのランプ本当に偽物だって言いきれるのかい?」
「!? 見えるのか?」
俺の問いに佐藤は静かに首を振った。
「見えないけど薬師寺、夕食の時おかしな食べ方してたろう? 最近ランプのうわさで持ちきりだったからもしかして、と思ったんだよ」
そうか、佐藤は確か体験者だって噂だったな。
だから何か気付く事があったのかも知れない。
そうでなくても佐藤の勘は鋭い。
「でも、見てのとうり俺はなんの変化もしてねぇぞ。 そいつは偽物だったんだよ」
「僕と吾郎君も最初は何の変化もなかったよ。 朝起きたら入れ替わってたんだけどね」
ふふっ、と佐藤が怪しく笑う。
「明日の朝練楽しみにしてるよ♪」
ニッコリと意味深な言葉を残しながら佐藤は部屋から出て行ってしまった。
「……」
「明日の朝、か……」
ポツリと眉村が呟く。
その顔がニヤけているように見えて軽く引いた。
「くだらねぇ。 俺は絶対に信じねぇからな、そんな話」
俺が女に、なんて絶対にあり得ない。
色んな思いがぐるぐる回る。
そんな気持ちを察したのか眉村は、そっと俺の肩に手を置いた。
「さ、もう寝ろ」
「なんだよ、珍しいじゃねぇかお前がそんな事言うなんて」
いつもは嫌だっつっても押し倒してくるくせに。
槍でも降るんじゃねぇか?
なんて思っていると、
「早く寝たらそれだけ早く女になった薬師寺のの姿を拝めるんだろう?」
鼻をぴくぴくさせながら呟く。
「〜〜〜っ、絶対今夜は寝るかっ!!!」
秋の夜長。
身の危険を感じて、今夜は徹夜する事に決めた。
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