「あーくそっ、邪魔だな」
手にくっついたランプははっきり言って邪魔だった。
夕食の時も皿は持てないし食べにくいし、トイレに行くにも一苦労だ。
何故か俺と眉村以外には見れないらしく、誰もこの異常な状態に突っ込んでこねぇ。
くそっ、このまま取れなかったらあの怪しげな関西弁のオヤジを訴えてやるっ。
「どうするかなぁ、コレ」
「無難に甲子園優勝でいいんじゃないか?」
「そんなんで優勝しても嬉しくねぇだろ。それにハッキリ効果がわかるやつじゃねぇと胡散臭すぎる」
俺がそう言うと、眉村も確かに。と呟いた。
「じゃぁ、女になる、とか」
「はぁっ!? なんで俺が女になんかならなきゃいけないんだよっ!」
とんでもない事を言い出した眉村。
絶対そんなの嫌に決まってる。
と、その時。
――カラン――。
「――え?」
いきなりランプが俺の手から外れ金属的な音を立てて床に落ちる。
「落ちたな」
暫く呆然とそれを見つめる俺達。
触ってみても今度は俺の手にくっついてくる事はなかった。
「お前、何を願ったんだ?」
「知るかよ、んな事!」
さっき言ってた甲子園優勝か? それともまさか女……。
なんとなく嫌な予感がして自分の胸を覗いてみた。
だがいつもと変わらない真っ平らな胸のままだ。
触った感じも男の胸板と大差ない。
「やっぱ、このランプただのランプだったんだよ。ん?」
ランプを指にひっかけてクルクルと回してみる。気がつくと眉村が口元を押さえジッと俺を見つめていた。
「どうかしたのか?」
「い、いや……大胆だな」
「?」
ギシリとベッドが軋み腰をグッと引き寄せられた。
「お、おいっ、ちょっと待て!」
「いきなり自分で胸を弄り出して、冷静でいられるか」
「なっ、違うって、さっきのは確認しただけで……っ」
何を勘違いしたのか身を乗り出して迫ってくる。
「確認って何の事だ?」
「だから、もしかしたら女になっちまったんじゃないかと思って……」
「女……」
しばしの間。
「大丈夫だ。お前が女になったら俺が責任もって嫁にしてやる!」
「アホかっ!」
鼻息を荒くして力説する。から思わずツッコミを入れてしまった。
「心配しなくても俺はお前の嫁になんかならねぇし、あのランプは偽物だったみたいだから女にはならねぇよ」
何を言いだすかと思えば、くだらねぇ。
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