「そうそう、きっとこれなんじゃね?」
二人してそのランプを覗き込む。
だが、煤けているだけで大して凄そうには見えない。
「こうやって手に持ってさ、ランプを擦りながら願い事を言うと叶うらしいぜ」
冗談半分でそれを手に掴んでみた。
眉村は興味津々にそれを眺め「ほぉ」とか「ふーん」とか声を上げてマジマジとそれを覗き込んでいる。
「全く、そんなお伽話みたいな事あるわけねぇよなぁ」
「そう言えば、茂野と佐藤の中身が入れ替わったと言う噂を聞いたことがあるぞ」
「マジかよ!? ハハッ、冗談だろ? 確かに二人の言動が可笑しな時はあったけど 」
「入れ替わり事件にその不思議なランプが関わっていたとすれば、わからない話ではないような気もするが」
「はぁっ? んなわけ……」
あるはずない。
そう思いながら、完璧に否定する事は出来ない。
確かに二人は人格が入れ替わってしまったかのような行動をしていた事があった。
「……」
「……」
互いにそのランプを見つめること数秒。
「アホくさ。さっさと買い物済ませて帰ろうぜ」
胡散臭すぎる話が馬鹿らしくなってランプを元の位置に戻そうとした。
ところが――。
「どうかしたのか?」
「これ、取れないんだ」
「!?」
何がどうなっているのだろうか。瞬間接着剤でくっつけられでもしたのか?
ランプは俺の手にぴったりとくっついて離れない。
一体どうなっちまったんだ。
「おー、新しい主が決まったみたいやな」
「!?」
突如店の中から明らかに胡散臭い男が現れた。
そして流暢な関西弁で一通り手にくっついたままのランプの説明をすると再び店の奥へと姿を消してしまった。
「って、ちょっ! 俺はこんなもんいらねぇぞ!」
叫んでみても反応はない。
それどころか人の気配すら感じられなくて眉村と顔を見合わせた。
「で、どうするんだよ、これ」
「取りあえず願い事を言ってみたらいいんじゃないのか?」
「願い事、ねぇ」
そんな事言われたって直ぐには思いつかねぇ。
「ゆっくり考えればいいだろう」
フッと僅かに笑みを零しスタスタと先に行ってしまう。
たくっ、他人事だと思いやがって。
仕方なく願い事はじっくり考える事にして、俺は眉村の後を追いかけた。
前/ススム