部屋に戻ると眉村は眠っていた。
ただ、随分熱が高いのか額にはたくさん汗をかいている。
ハァハァという荒い息遣い。
淀んだ空気がなんとも息苦しい。
「ちょっと換気するぞ」
一日中閉め切っていたカーテンと窓を開ける。
さぁっと流れだした部屋の空気に眉村が「んっ」と小さく眉をひそめた。
「悪い。起こしたか?」
尋ねても返事はない。
どうやら眠っているらしい。
起きなかった事に安堵して額の汗を拭いてやる。
ついでに熱を測ろうと額に手を当てた。
「なんだ、そこは額をくっつけてキスするんじゃないのか」
「!?」
いきなりパカッと目を開けた。
あまりの驚きに心臓が一瞬止まりそうになった。
「起きてるんなら、起きてるって言えよ!」
「すまない。今気がついたんだ」
嘘つけ! たった今目覚めたやつがいきなりキスがどうとか言うわけねぇ!
いまだにバクバクと早鐘を打つ鼓動を鎮めようと胸に手を当てる。
ひとつ深呼吸すると改めて眉村の顔を覗き込んだ。
顔色は、さっきよりいいみたいだ。
「お前、朝から何も食ってないだろ。リンゴ食うか?」
「……そうだな少し貰おうか」
ゆっくりと起き上がる。
よかった。少しは食欲もあるらしい。
部屋に戻る前に食堂によって貰って来たリンゴを皿ごと眉村の膝に置くと、何か不満そうな顔を向けてくる。
「なんだよ」
「食わせてくれないのか?」
「はっ!?」
思わず耳を疑ってしまった。
それだけ具合が悪いのかただ単に甘えたいだけなのか。
「そんくらい自分で食え」
「病気の時くらい優しくしてくれてもバチは当たらないじゃないか」
珍しく、ガキみたいな事を言う。
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